たれ目院長ブログ 〜注入治療を極めるために必要なのは神の手よりもむしろ「神の目」〜

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テレビでよく特集されているのが「神の手」をもつ外科医。普通なら切除を諦めるような腫瘍も神の手で切除し、無事に退院。こういう番組、私もよく見ます。私は麻酔科医、外科医として手術に関わる仕事が多かったため色々なドクター、手術を見ています。神の手クラスの手術を見たこともありますが、確かに早くて正確。別格でした。

さて、注入治療にも「神の手」ドクターは存在するのか。今のところそう呼べるのは美容業界での重鎮でありヒアルロン酸注入治療の第一人者であり、アラガンジャパンのインストラクターを束ねるヘッドファカルティである自由が丘クリニックの古山先生や、MDコードの開発者であるデマイオ先生、そのようなクラスでしょうか。

私のことを「ヒアルロン酸の神」と呼んでくださる方がおられます。気持ちは嬉しいですがまだ修行中であり到底神なんて状態ではなく、99%のジョークと1%の期待を込めて、または世界一のリップサービスと受け取っておきます(笑)。もちろん目指すのは日本一の注入治療ですが。(←何でもやるからには1番を目指せという教育と4人兄弟で常に生存競争に揉まれて育った結果の思想)

私の話は置いておいて、ちょっと改めて考えてみます。

注入治療において神となるのに必要なのは本当に「手」なのでしょうか。

否。

もちろん正確精密に注入できる技術は必要ですがもっと大事なものがあります。それは見抜く「目」。

そう、神の手の前に重要なのは「神の目」なのです。患者様の悩みを正確に受け止め、症状を見極め、そこに最適な治療を過不足なく当てはめることができる、それをするために必要なのは全てを見抜く「目」です。

ヒアルロン酸注入治療は非常に自由度の高い治療のため、どこにでも注入できてしまう反面、下手に注入すると良くなるどころかバランスを崩してしまったり違和感のある形になってしまうことがあります。患者様の症状を見極め、どこにどの製剤をどの程度、どのように注入したら本当に改善するのか、それを見極めることが非常に重要となります。

いくら手先が器用だったり基本的な注入技術は持っていたとしても、どこに注入するべきかを見誤るとせっかくの技術が活かされません。

ラインのずれ、面の形、微妙な左右差、老けて見える本当の要因、顔を大きく見せる要素、それらを細かく見抜き、必要な注入量を設定したら実際に注入していきますが、その施術中であってもちゃんと狙った通りの変化が起きているかどうか、ラインのずれや左右差は本当に改善してきているのかを正確に見るのもやはり「目」です。

この見抜く「目」とは目そのものではなく、顔のラインの見方であり、マイナス要素を拾うことであり、治すとどうなるかを知っておくこと。つまり観察力、分析力、それを支える知識と経験のこと。デスノートのように死神と取り引きしてもらえるような目ではありません。そんな簡単には手に入りません。

しかし訓練することによって誰でもある程度は身につけることができます。医師にとって訓練とは当然、勉強、実際の施術経験を含みます。

冒頭に述べた「神の手ドクター」を特集する番組の手術シーンなどを見ると、ナレーションでは動きがすごいと言いますが実はちょっと違うことがわかる人にはわかります。もちろん手の動きも別格に早くて精密ですよ。でもそれ以上に判断力がずば抜けているのです。

脳でもお腹でもどこでも良いですが、普通なら手術中に目の前に現れた組織が脂肪なのか血管や神経を含むのか、と迷った時、簡単には手が出せないためそれらを確認する作業を行い、そのために時間がかかります。ところが神の手クラスのドクターはそれらに対して明確に答えを持って進みます。

「この組織は切って大丈夫、これはある神経を含むけど切らないと進めないし切ってもしばらく痺れが出るだけでいずれ回復する、これはすぐ裏に腫瘍があるから触らない。」

というように。側から見ているとなぜそう言い切れるのかわかりません。しかし実際に神の手ドクターの言った通りにコトが進むのです。となるとすごいのはやはり「手」ではなく「目」であり、普通なら迷うところをそれまでの経験によって瞬時に判断できる、だから早いのです。

ヒアルロン酸注入治療は、注射する技術そのものはそれほど高度なものは求められません。ましてや心臓手術や神の手クラスのドクターに必要な手先の精密な動きに比べたら、医師であれば誰でも訓練して身につけられるレベル。そうなるとやはり必要なのは神の手というよりは「神の目」、となるわけです。

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