注入オタク院長ブログ 〜専門家の技③〜

専門家と言っても形は様々で、資格があるから専門家という時もあれば、技術があれば良いとすることもあり、技術にあまり関係なくずっと一つのことを行なっているから専門家、と言うときもあります。定義は様々なれど、名実ともに専門家であることが理想なのは間違いないと思います。つまり、資格があり、専門家と名乗るに相応しい技術を持ち、かつその専門を日々突き詰めている、その形が一つの理想と思われます。

医師において考えると、専門家と名乗るのに必要な資格はとりあえずは専門医でしょう。専門医というのはその科をある程度のレベルまで一定の期間トレーニングを積んだことを意味しますから、名実のうちの名としては重要な指標となります。

次に、名実の実の部分、つまり純粋な実力、技術の部分。ここは最も判定が難しいところです。専門医を取得していることが一定の技術を持っていることを示すのはもちろんその通りですが、逆説的に言うと専門医があるからといって無条件に技術も高い、とすることが当てはまらないことがあるためです。そのことは医療業界に属するものとして、医師としては当たり前のことで、とあるドクターが専門医あります!、となった時に、じゃあもう全部できるね、とはならず、それはいいとして今何ができる?どこまでできる?、となります。

かといって専門医という資格が軽い、意味がないというわけではありません。この微妙なニュアンスは、一般の方からするとわかりにくいところ。

本来は、専門医を取得したことが高い水準の実力を持っていることを示す資格であると良いのですが、科によっては専門医を取得するのはある種の通過儀礼のようになっていたり医局との関係性との縛りがあったりやや形骸化していたりして、専門医という資格の意味が異なる事情があることが関係しています。とはいえ、一定の条件を満たす経験、症例数があることを表す資格ですので、一般の方からすると医師選びの指標になると思いますし、私が他科受診する時などはやはり参考にします。皮膚科クリニックに行くときは専門医があるかどうかは見て考えます。

では、純粋な技術はどう判断すれば良いか。

これは難しいです。身をもって体験することが必要にもなります。ただし、その際に思っていたよりも技術がなかった、となるとそのデメリットが身体に刻まれてしまうので気軽に受けるわけにもいきません。

さらに美容医療特有の事情も絡んできます。保険診療であれば指導医がいて、外科系であればたとえ専門医をとったレベルであっても勝手に一人でオペすることはなく、ちゃんと技術が備わるまでは指導医と一緒に手術をします。その期間は皆さんが思っている以上に長く、そのおかげで技術レベルが高いところで統一されていきます。消化器外科医で専門医も取得し、10年の経験がある、となれば、大体これぐらいのことはできるであろうということがある程度正確にわかります。

それに対し、美容医療の世界ではその指導医という存在がほとんどなく、トレーニングを積む場もほとんどないまま美容ドクターとなり、それでも売り上げを出さないと経営が成り立たないため施術を行なっていきます。そしてさらに複雑なことに、美容医療の技術はそれまでの保険診療の経験が直結しないこともあること。もちろん皮膚のことは皮膚科、顔の手術は形成外科が専門として近いと思いますが、美容の治療は保険診療と異なるというのもドクターにとっては常識。美容経験ゼロでいきなり美容のトップドクターとして活躍するのは難しいでしょう。

また、一つのことを突き詰めて行う専門家というものも存在します。このパターンが加わるとコトはより複雑になります。治療というのは技術と知識の塊なので、経験数は多いに越したことはありません。では、専門医は持っているけど美容の経験が少ないドクターと、専門医はないけど美容経験の長いドクターとではどちらが上手か、と聞かれても一つの要素で答えが出るわけでもなく難しいです。専門医を持っていてもまだ美容治療が十分にできないドクターもいれば専門医はなくても上手なドクターもいます。

結論が出ないことを議論していても発展性はないので、美容医療における特殊なジャンルについての専門性を考察してみましょう。その特殊なジャンルというのは、それまでのジャンルに当てはまらない新しい治療概念、分野の領域になります。

医療、医学というのは研究の歴史の積み重ねですので、病気の治療においては完全に新しい治療が誕生することは稀です。過去のエビデンスをひっくり返すような新治療であったり、エビデンスにはない治療が誕生することは、ないわけではありませんが非常に少ないです。それほどエビデンス、科学的な研究結果というのは軽くはありません。

それでも誕生することがあり、それが日々の研究の成果や、臨床ドクターの鋭い感覚のおかげで医療が発展する瞬間となります。たとえば、C型肝炎は薬で治る時代になりましたし、AIDSも発症をほぼ抑え込んで通常の生活を送れるようにもなりました。また、傷の閉鎖療法という考え方は今はもう当たり前のようになっています。しかし、どれもこれも私が研修医になった頃は全然当たり前ではなくて、C型肝炎は治らない怖い病気、閉鎖療法なんてガーゼ処置が正しいとされているのに傷を塞ぐなんてとんでもない、感染したら取り返しがつかない、というように全く逆の状況でした。それが好転したのはひとえに研究、努力の結果です。

美容医療にも技術革新によってブレイクスルーのような治療、全く逆の発想の治療などが生まれることもあります。というより、まだまだ発展途上の分野ですので、保険診療に比べるとそのようなことがよくあります。それどころか、今までにない発想や理論の治療が誕生することもあるくらいです。それが注入治療によるTFT、骨格矯正的なヒアルロン酸注入治療であったり、歯科領域におけるマウスピース矯正であったり。

そのような、既存のジャンルに当てはまらないような治療は専門医というものが存在せず、指標となるものがありません。「え、ヒアルロン酸って昔からあるでしょ、顔に注射するし形成外科医が良いんじゃないの?」という声が聞こえてきそうですが、従来のヒアルロン酸注入と骨格を矯正する注入治療は同じヒアルロン酸という製剤を使っていても治療理論、技術が全く異なります。それ故、昔から長く美容治療しているから、という経験則があまり意味をなさず、かつ関係する専門医、資格がないので技術の判定材料がありません。

じゃやっぱり形成外科が良いのでは、専門医を持っているからには最低限ヒアルロン酸くらいはできるでしょ、と思ってもそれもまた一致しません。というのは、骨格矯正的なヒアルロン酸注入は従来にはなかった発想であり、新たな理論として学ぶ必要があるからで、いやそんなコトはない、今までと似たようなもんだろうという気持ちで治療をしていると実は色々なリスクがあります。正しく学び直さないと、新規の理論による新しいリスクに気付けないというのも問題で、私は多くのドクターにレクチャーする機会があるのでそのような状態のドクターをよく見かけますし、目に見えないリスク、気付けないリスクを持ったまま治療をするのがいかに危険かというのも見てきています。

これは飛行機のライセンスにも似ているとイメージしています。実はパイロットのライセンスは一つで全ての飛行機を飛ばすことはできません。ボーイング747のパイロットが787を操縦するにも、エアバスを操縦するのにも型式訓練を受けます。それは同じ飛行機と言っても操縦系統、システムが大きく異なるためです。緊急時には型式が違ってもなんとか操縦できるかもしれませんが、通常はそんなリスクを取るわけにはいきません。一般の人からすると同じ飛行機なのになぜできない?、ライセンスがあるからできるでしょ、と思われても、専門的な技術はそう単純なことではないのです。

さらにまた別の要素も関係します。ヒアルロン酸注入の特徴は皮膚を切開しない、ブラインド処置ということです。基本的に外科医は皮膚を切開し、直接目で見て手術をします。皮膚切開を伴わなくても内視鏡やカメラ等で目視しながら手術しますし、X線などを使った透視下で最低でも処置をします。完全にブラインドで針を深々と刺し、目標に針先を正確に到達させる技術を磨く科は限られています。実は麻酔科にはそのようなブラインド操作の技術が多くあり、その感覚を磨くシーンがあるのですが、その訓練を受けている人とそうでない人は動きが全然違うのですぐわかります。

現在広まりつつあるTFT治療としての注入治療、骨格矯正を伴うヒアルロン酸注入は、新たなジャンルの治療だと私は認識しています。それはほぼブラインド操作でありながら内部の構造、解剖に変化を加える処置であるからです。通常の外科領域では、解剖構造を物理的に変化させる治療は切開して目視下で行います。当たり前です。わざわざ見えない状態で行う意味もなければそんなコトは通常許されないからです。胃切除も心臓オペもフェイスリフトもブラインドで行う人はいません。

最新のヒアルロン酸注入は解剖構造を変化させ、筋肉や皮膚の動きをある程度制御します。そんな構造変化を起こす治療をブラインドで行う、というのはあまり聞いたことがありません。となると、今までの知識や経験でできる、という発想を捨てて、新しい治療として一から学ぶ、という気持ちと行動が必要になってきます。ボーイングだけした操縦したことないパイロットがエアバスを安全に操縦するためには訓練が必要です。気合いだけでは危ないのです。学び直しが必要です。

人は何か決定的なもの、指標、拠り所を欲します。しかし残念ながら、美容医療のクリニック選び、ドクター選びで単純な指標はありません。その上、新しい発想、理論の治療となるともはや既存の指標や目安はほとんど意味をなさず、必要な知識や訓練を無視して経験にのみ頼った治療は大きなリスクを抱えます。美容医療といえどもどんどんエビデンスが重要視され、学術的な治療が増えてきて情報も新しくなり技術は進化しています。

資格を持っているから専門家、それを多くしているから専門家、と単純には言えず、むしろ全てを高いレベルで兼ねそろえていて当たり前、専門家としてスタートラインと呼べるのではないかと思います。しかし、新しいジャンル、既存の枠組みが当てはまらない場合には適した資格や指標が必要となるのではないかと思います。

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