たれ目院長ブログ 〜ドクター向け。ヒアルロン酸注入治療はどうやって学ぶか。〜

ありがたいことに、たくさんのドクターに注入治療を教える機会に恵まれました。教えることが好きな私にとってはそのような機会が多いのは幸せなことです。この数年で、指導に関わったドクターはのべ数百でしょうか。数えていないですが。

それだけ多くのドクターに教える行為をしていると、何が壁となり、それを突破するためにはどうすべきか、どのようなドクターが伸びやすくて、どんな状況のドクターが技術習得に悩むか、などなど、教わる人の考えや悩み、伸び方などの色々なことが見えてくるようになります。

ではどうすれば効率よく注入治療を習得できるか。

まず大前提として、美容医療といえども医療であること、すなわち医学という学問の領域から離れないことが重要になります。シワと見るやボトックスをうっていたり、先輩から言われたことを漫然と続けていること、けっこうあります。

セミナーなどで、質問されるドクターに、私は時々質問で返すことがあります。質問に質問で返すのは失礼とはわかっていながら。例えば、額のシワにボトックスをうつとどうしても目が重くなるが、重くならない方法はないか、と聞かれた時に、先生はなぜ額のシワにボトックスをうつのですか、と聞くと、自信を持って理由と目的を理論的に答えられる先生が意外と多くないのです。その瞬間、質問された先生は、自分の普段行なっている施術がいかに医学的な根拠を考えずに行なっているか気付くのです。

誤解しないで欲しいのは、そのようなドクターが元々いい加減でダメなドクターというわけではないこと。ダメどころか、保険診療の経験長く、専門医も取得されていることもよくあります。つまり、美容に転身するまでは医学的で根拠ある治療をずっと行なってきたわけですが、なぜか美容医療に来ると医学的な考え、診断があっての治療というプロセスをすっ飛ばしてしまうことがよくあります。

医師としての経験長く、医学的な考えを備えているはずのドクターが美容に来た途端にそれをすっ飛ばしてしまうのは不思議な現象です。理由の一つとして、美容医療においては適切な教科書や教育が少なかったということもあるでしょう。勤務する環境の先輩から言われたことを善として行うしかなかった、しかも売り上げを求められるために深く考える暇もない。

しかし、厳しく言えば、やはり美容医療を保険診療とは別のもの、ちょっとナメている意識があるのではないでしょうか。

私の考えは常に同じです。美容医療といえども医療であり、医学である。自由診療といえども医療であり医学である。医学である以上、理論的でエビデンスに基づいた根拠ある治療をすべき。

幸い、今の美容医療は様々な研究データがあり、かなりエビデンスもそろってきているので、ちゃんと医学的で理論的な治療を行うことができます。医療の原則から外れた治療に慣れてしまうと、改めて理論を学び、構築し、診断の後に最適な治療を医学的に判断して選択する、という流れに頭を戻すのが難しい作業になってしまいます。

注入治療を効率よく習得するためには、今までの注入治療の経験、考えを一旦全て捨て去り、基礎から学び直すこと。これは、口で言うほど簡単ではありません。実際にそれまでの経験や知識を捨てようとしても捨てきれず、理論の再構築の妨げになっているドクターをたくさん見てきてます。

私の好きな例え話で説明してみます。

従来の注入治療をある程度経験していると、その経験に新しい知識や技術を足してアップデートさせようとします。しかしそれは往々にして上手くいきません。理論が根底から異なるためです。みかんの木を一生懸命育ててもできるのはみかんであり、りんごは絶対にできません。もしりんごを実らせたかったら、木を根から引っこ抜いてりんごの木の種を植えて育てなければなりません。

りんごを早く実らせるためには、できるだけ早く自分の育てているのがみかんの木だということを真に理解して気づき、一刻も早く植え替えること。その際に、せっかく育てたみかんの木がもったいないからと、同時に育てようとしたり根っこを一部でも残そうとしたりしてはいけません。そのような状態ではりんごの木は上手く育たないからです。

あくまで例え話なので、みかんに罪はなく、みかんよりもりんごが上という意味ではありません。念の為(笑)

治療の話に戻すと、注入治療の習得が早い人は、従来の注入治療の考え、経験を一気に捨てて頭を切り替え、本当にゼロから初心者のように学べる人。ですが、これは本当に大変難しい作業になります。かえって美容医療経験ゼロのドクターの方が成長が早い場合があります。邪魔な情報がないのでスポンジのように全てを吸収し、正しい治療理論を余計な考えに惑わされることなく綺麗に構築されていきます。

その様子は何度見ても楽しく、教えがいがあります。教師冥利に尽きます。以前に書きましたが、私の教育におけるポリシーは『出藍の誉』。教える時は相手が私を超えていけるよう、常に全力100%で出し惜しみなく教えます。もちろん相手のレベル、状況に合わせて必要な情報を最短で伝えられるように考えながらですが。

最新の注入治療を学ぶ環境やチャンスはどんどん増えています。しかし、早く習得するためのコツは、以外にも従来の考えからどれだけ早く切り替えられるか。どこで学ぶか、誰から学ぶか、何を学ぶか、などももちろん大事な要素ですが、従来治療の考えの上に足そうとしても上手くいきません。木造一軒家の基礎に50階建てのビルを建てようとするようなもので、どこかで無理が出て崩れます。同じヒアルロン酸という素材を使ってるので分かり難いですが、実は全く異なると言って良いくらい、理論からして違う治療になっています。

注入治療はとりあえずとかなんとなくで行なっていい治療ではなく、初心者ドクターが手始めに覚えるプチ整形でもありません。理論的でエビデンスに基づいた医学的な治療であり、そのためには理論、研究データ、エビデンス、解剖を学ぶことが必須です。早くそこに気づき、戻ってゼロから勉強しましょう。遠回りに見えてもそれがかえって効率良い習得につながります。

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