たれ目院長ブログ 〜注入治療の入口はまず理解すること、学ぶこと。〜

ヒアルロン酸注入で若返る!というのが最近の流行りの治療らしいですが、ヒアルロン酸というゼリーを顔に入れるだけでなぜ若返るのか、ということを正しく理解するのは難しいことです。一般の患者様がドクターと同じ理解をする必要はありませんが、最低限わかっているべき治療の仕組みがあり、それをできるだけ噛み砕いて丁寧に説明する責任がドクターにはあると考えます。

過去に、ヒアルロン酸もボトックスも含めて注入治療を受けたけれどもいまいち満足しなかった、という患者様は当院によく来られます。しかし、治療の内容や治療後の顔を見ると、必ずしも間違った治療がされているわけではない、むしろちゃんとした治療が丁寧になされている場合も少なくありません。当然変な顔になっていることはなく、ナチュラルに治療されている状況。

そのような時に、治療の仕組みを丁寧に説明し、それまでの治療は正しく行われていることを説明すると、初めて自分の受けた治療が何のためであり、どのような変化を狙ったものかを理解され、納得される、ということが多いのです。

ここで言いたいことは、学ぶべきはドクターであり、患者様ではないということ。タイトルにある、まず理解し学ぶべき、というのはドクターに向けた言葉であり、患者様は学んだドクターから説明を受け、理解納得してから治療に進むべきと考えてます。ラベールでは私だけでなくドクター全員、スタッフ全員が同じ意識です。

SNSなどでは、患者も勉強する必要がある、という意見を見ることがあります。患者様が勉強すること自体は大変良いと思いますが、正しい治療に辿り着けないのは勉強が足りないとするのはおかしな話です。そもそも、正しい治療を提案するためのプロがドクターなのですから、本当に勉強すべきはドクターです。極端な話、正しい治療を選択するには患者様の勉強が必要ならば、患者様は我々ドクターと同じだけの勉強をして、経験をしないといけません。つまり、それは無理な話ということ。

一般の患者様に知識も勉強量もドクターは負けてはいけないはずですが、時々、あまり勉強をしていないドクターの発言を目にすることがあり、残念だなと思うことがあります。美容医療は自由診療、自由競争なので、多少は集客を目的として、自分のクリニックに誘導する、自分の得意な治療に誘導するようなことはあると思います。ある程度は仕方ないかもしれません。しかしそのある程度を超えた発言があり、その発言を見ると明らかに勉強不足、知らないが故の発言だとわかります。

医療の世界は日進月歩で、常に最新の情報を求めていないと数年で自分の知識やテクニックが古くなる、なんてことはよくあります。それも、以前までの常識が180度ひっくり返り、非常識が常識となることもあります。例えば、今では当たり前の、傷に対する閉鎖療法ですが、これが広まる前は傷にはガーゼをあてる、定期的に取り替えるのが当たり前の常識で、傷を塞ぐなんてとんでもないことでした。

ところが、閉鎖療法が研究され、エビデンスもそろった結果、今では逆に当たり前になりましたが、その過渡期を見た私はまさに常識がひっくり返る様を経験してきました。今の若いドクターは閉鎖療法が当たり前でスタートしていて、まさかそれが非常識だったなんて思わないかもしれませんね。他にも、出始めはまだ誰もしていないような遺伝子検査が5年後には通常の治療過程に組み込まれている、なんてこともザラにあります。

日進月歩の医療の世界において、勉強不足、最新の情報を知らないということは、医師として不利を通り越して致命的となることがあります。その不利益を被るのは患者様です。ありえないことですが、もしも今現在でも閉鎖療法、湿潤療法を知らずに傷や火傷に対して漫然とガーゼをあてるだけの治療をしていたら、傷の治りが悪かったり瘢痕化したりと、一生懸命善意の治療をしていても結果的には患者様にとって不利益となることでしょう。

一般の仕事において知らないことは不利益、つまりそのままの意味通り、利益が減ることにつながるでしょうが、医師の仕事における不利益は患者様にとってマイナスになること、負担が増えることを意味します。ドクターは常に勉強し、最新の情報を持っておくのは必要であり義務であると考えます。

人の顔は年齢を重ねると、皮膚の中で骨、筋肉、脂肪という構造が変化し崩れていくことがわかっています。若返りをするということはその変化した構造を若い頃に戻すことが必要であり、その医学的、科学的な理論を無視してナチュラルに若返るのは理論的に考えて難しいことはすぐわかります。いや、構造を戻さなくても良いからとりあえず皮膚がピンと引っ張られた形になれば良い、というのであれば、それは厳密には若返りではなく作り変えになります。患者様がそのような作り変え、整形を望まれている場合には大変良い選択となりますが、ナチュラルな若返りを希望している場合にはちょっと違う方向に行ってしまうことがあります。

作り変える整形と構造を戻すアンチエイジング治療を厳密に分けることは難しいです。若返り治療と言っても厳密には若い頃の構造に戻しながらより綺麗に見えるラインに近づけていることもあるので。しかし、ヒアルロン酸でできること、ヒアルロン酸が得意なこと、ヒアルロン酸でしかできないことなどが、数年前に比べると飛躍的に増えて広がっています。もし10年くらい前の知識からアップデートしていないと、かなり古い情報で治療を判断することになり、それは現在のエビデンスから遠く離れてしまっている可能性があります。焼けただれた皮膚に、いまだにガーゼをただあてるだけの治療をするようなものです。

注入治療を行いたいというドクターも、逆に注入治療を否定したいドクターも、皆勉強すべきと考えます。もう勉強するだけの研究データ、エビデンスがたくさんありますので、肯定するのも否定するのも学問的に行うのが我々医学者の議論です。自分の感覚や古い知識に頼った意見はエビデンスも最新の知見も乏しく、発言するとかえって勉強不足であることが知られてしまうかもしれません。

と、今日はやや厳しい内容になりましたが、自分の専門ではないことを勉強すべきか、どう勉強すれば良いか、についても書いてみたいと思います。自分の専門領域以外のことを学ぶことに慣れているドクターはそもそもあまりいません。専門領域の勉強でも大変ですし、そもそも専門領域以外のことを学ぶ必要があまりないことが多いですから。しかし、逆に他科のことを学ぶことに慣れている科もあります。それは何科というと…、また長くなるので今度のテーマにします。

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