たれ目院長ブログ 〜美容治療は終わりのない治療、ではありません。終わりはありますよ。ちゃんと。〜

マラソンが嫌いだった私は1500m走が嫌いでした。中学や高校の頃の体育などであったあれですね。バスケやサッカーなどの球技が好きだった私にとっては、ただ走るだけなのはつまらなくて、なぜこんなことをしなければいけないのか、と苦痛でした。しかし、その苦痛も終わりが決まっているのでまだ乗り切ることができました。1500m走れば終わりですから。

もしそれが、先生が終わりと言うまでただ走る、そしていつ終わりになるのかはわからないという状況であれば、仮に同じ1500mの地点でもかなり疲労とストレスが溜まることでしょう。いつ終わるかわからないストレスと闘いながら延々と走るのは大変苦痛です。終わりはいつなのか。1500m?3000m?10000m?、いや、もしかしてもっと長くて全然終わらないとしたら…、走りながらそんなことを考えていたらそのストレスと恐怖感は強くなります…

それならゴールを決めてくれた方がまだ頑張れます。3000mと言われたら、長いし疲れるけどそこまで走れば終わりだ、と考えられるしペース配分もできます。

美容医療の中でもヒアルロン酸注入治療はゴール設定が大事。何歳若返りたいか、その状態をどれくらい維持したいか、明確に目標を定めて治療していくことが可能であり、それを決めずに治療をしているといつ止めればよいのかわからなくなってしまいます。上記のマラソンで例えればゴールを決めずに走る時のストレスを感じ続けてしまいます。

ゴール設定が必要なのは、そもそもヒアルロン酸注入が少し特殊な治療であるためです。治療するかしないか、ゼロか100かの選択をするようなオペとは異なり、0から100%までの範囲で細かく治療段階を設定でき、かつ大体の形を狙うような治療とも違って0.1mm単位での微細なラインをコントロールするようなことも可能な治療、こんな特徴を持った治療はおそらくヒアルロン酸注入以外には今のところないのでは、と思うくらい治療の幅が広く奥行きが深いのです。

と言われてもあまりイメージできないかも。それはおそらく、骨格矯正的なヒアルロン酸注入の世界をまだ知らないのかも。

仮に、千切りも刺身の薄切りもでき、木の薪割りも手術までもできる包丁がある、と言われてもすぐには信じられないでしょう。普通はそんなのあるとは思えません。刺身は刺身包丁、薪割りは斧でやるべき、そうでないとできないのが通常です。しかしその常識から外れた素材があるとなれば可能ですが、知らないことにはそれを信じることすらできません。

ヒアルロン酸注入治療は何でもできる夢のような治療ではありませんが、実は一般的に知られているヒアルロン酸治療よりもかなり幅広いことができることはあまり広まっておらず、従って知らない人から見れば、そんなことができるの?、と信じられない気持ちになります。そのことは私自身が最初に体験しているので、その驚きはよくわかりますし、知ってしまった後ではそれまでの「信じられない」が当たり前の普通のことになることも経験してきています。

最新のヒアルロン酸注入の世界を知った後に考えるべきは、どういう方向性でどの程度の治療を、どれくらいのスピードで行うか。これには決まったパターンはありませんので、患者様の希望に合わせて選択していただく必要があります。どれだけの治療をするとしても完全にオーダーメイド治療ということ。

ラベールでは最初に診察で説明を受ける時に、何歳若返りを目指すのか、または卵形の輪郭を目標として実際にどれくらいの治療、何%の完成度で治療終了とするか、などといったゴールを話し合っていきます。ゴールが決まればそこに向けて形やラインを整えていきます。

ゴールが決まれば必要な治療がわかりますし、そこに向けてどれくらいのスピードで治療を進めていけば良さそうかのペース配分も決まられます。「こめかみの凹みを治すのにヒアルロン酸が何本必要か」というのはよく聞かれる質問の一つですが、必要な治療量は常にどこまで治療したいかの決定後になります。こめかみの凹みが極度に強い人が完璧な卵形にするための量と、こめかみの痩せが少しで、かつ卵型へ50%程度近づければよい、という人とでは必要量は大きく異なってきます。

一度設定したゴールはその都度変更、修正していきます。5歳程度の若返りをイメージして治療した結果、物足りないからもっと治療をすることもあれば、10歳若返りたいとして治療している途中でやっぱりもう十分と感じて治療を終了とすることもあります。はたまた、シャープなラインを目指していたけどやっぱり丸みのある顔が良いから方向性を変更する、など。

美容は一度手を出すと止められない、続けないと崩れる、という噂は巷でよく聞きますが、実は終わりのある治療です。注入治療に限らずオペであっても肌治療であっても、どういう方向性でどの程度の変化を目指すかを治療前に綿密に打ち合わせをして、ドクターとしっかりとイメージのすり合わせをすると、満足度の高い結果が得られ、よほど変な方向にいってしまうことはないでしょう。患者様もクリニック、ドクターも、お互いがハッピーになります。

ちなみに、歳とってからはなぜかマラソンやジョギングが好きになりました。ただ走ってるだけが楽しくなる瞬間があり、走った後の爽快感や満足度も感じられるようになりました。不思議です。エンドルフィンが出る瞬間がわかるようになり(笑)、その瞬間から足が軽くなって呼吸も楽になるのです。それが気持ち良いと感じるようになったのは、歳をとって心に少し余裕ができたからでしょうか。若い頃はもっと安直に表面的なことばかり求めて気にしていたような気がします。

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