たれ目院長ブログ 〜車内で急病人、お医者様いませんか〜

先日、仕事のために東京へ移動中の新幹線車内にて、「○号車で急病人発生しました。お医者様がいらしたら〜」と放送が。私はアイマスクをして寝ていたのですが放送が聞こえてきました。

他に医者くらいいるだろう、その人が救急医であったりすれば自分が行くよりも良いだろう、と一瞬迷いましたが、迷いながらも放送が終わらないうちに身体は起き上がって現場に向かっていました。

できるできないとか、他に医者がいたら…、という考え以上にもし倒れている人が何らかの処置が必要で、それによって最悪の事態を回避できるとしたらやらなきゃ、という思いで頭がいっぱいになりました…

前を走る乗務員さんがAEDを持っていたのが見えたため、心臓マッサージまでを想定しながら現場に着くと、人が倒れていて意識は全くなし。

急いでバイタルチェックをし、呼吸が怪しく嘔吐の心配もあり側臥位で気道確保。そして一番近い駅に停まってもらい、予め連絡して待機してもらっていた救急隊員に引き渡すことができました。

バイタルチェック等をしている間に意識は徐々に回復する様子が見られ、大事には至らず済みそうで良かったです。

今でこそヒアルロン酸注入、ボトックス注射を得意とした注入治療専門、インストラクターなどと言っていますが以前は救急と麻酔科医でした。そこからは離れてしまいましたが最低限のことは身体が覚えているものですね。今回も処置が終わってほっとした後、研修医当時の忙しさ、大変なことなど思い出していました。

今回、もし心臓マッサージや挿管が必要であれば行なっていたでしょうし、CPAであれば躊躇なくAEDを使用していたことでしょう。こういった医師として最低限必要な技術や知識は全てのドクターが知っていて欲しいと思いますし、研修医制度が始まってからは麻酔科や救急などで経験する機会があるため、もしかすると若いドクターほど慣れているかもしれません。

救急隊への引き渡しが無事に済んだ後、名前と連絡先を聞かれました。いやいや、名乗るほどのものじゃ…、と格好つけたかったですが(笑)実際はそうはいきません。乗務員さんから見たら医者と名乗り出たもののそれを証明するものはなく、どこの誰かもわかりません。本当は医師でもない人に処置、指示されたとなっては問題となるでしょうから、ちゃんと名前やクリニックの存在をお伝えしました。

医師免許というのはあまり見たことがない人が多いと思いますが、B4くらいの大きさの賞状なんです。こんなの普段持ち歩くことはできず、本当は自動車免許のようにカードサイズにして持ち歩けるようにして欲しいのですが…。医者というのは自分の資格を証明するものを持ち歩けないというちょっと変わった職業なんです。

後日JRから感謝状とお礼の品が届きました。お礼品はかわいい新幹線のマークが付いたペン。

誰かの助けとなれたこと、悩みを改善できたこと、それで感じる喜びこそが医療者としての心得というかエネルギーになるのではないかと思いますが、よく考えたらそれは人としての原点でもありますね。

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