ボトックスについての誤解を解く!シワ伸ばしではない、その真の目的と顔の筋肉の複雑な制御

ボトックスについての誤解を解く!シワ伸ばしではない、その真の目的と顔の筋肉の複雑な制御

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こんにちは。今回は美容医療の中でも、特に誤解の多いボトックス注射について、深く掘り下げて解説していきます。

ボトックスは、数ある美容治療の中でも、おそらく最も誤解されている治療薬ではないかと個人的に感じています。

 

ボトックスとは何か?その名称の正しい意味

まず、ボトックスという名称について正しく理解しておく必要があります。

「ボトックス」とは、本来、アラガン社のボツリヌス毒素というお薬の固有名称です。特定の会社の特定薬剤の商品名なのです。

この製品があまりにも有名になったため、現在では同じジャンルに属するボツリヌス毒素製剤全般を、総称として「ボトックス」と呼ぶ傾向があります。世の中にはボトックス以外のボツリヌス毒素製剤が多数存在しますが(ここでは便宜上ボトックスと呼びます)、クリニックの治療では正規品であるボトックスのみを扱っています。

「シワ伸ばし」ではない!ボトックスの真の目的

美容業界では「ボトックスはシワ伸ばしの薬だ」と思われがちですが、これは大きな誤解です。

ボトックスは、そもそもシワ伸ばしを目的としたお薬や治療ではありません。

ボトックスの真の目的は、筋肉の動きを止めることにあります。具体的には、神経伝達物質を抑えることで、結果として筋肉が動かなくなり、それに伴ってシワが伸びるのです。

当院のホームページでも説明されている通り、ボトックス注射は神経の伝達を弱め、筋肉の動きをコントロールしてシワを改善したり、筋肉を縮めて顔の輪郭を小さくしたりするために使用されます。

表情筋の複雑さとボトックス治療の難しさ

ボトックス治療で結果を出すためには、「どこにある筋肉を、どういう風に止めるか」が極めて重要になります。単純に「ここに打てば良い」「ここは打っちゃダメ」というほど簡単なものではありません。

顔の筋肉、つまり表情筋は、骨格を動かす体の筋肉と異なり、皮膚を動かして表情を作るという特徴があります。これらの表情筋は、極端に言えば「生きるために絶対的に必須」というわけではありません。しかし、物を飲み込む筋肉など、生命維持に必要な筋肉の動きは、絶対にボトックスで止めてはいけません。

患者様が「この筋肉の動きが問題だ」と感じ、その動きを制御したい場合にボトックスが使われるわけです。

ボトックス治療の難しさは、顔の筋肉の複雑な動きにあります。例えば、教科書的には「口角下制筋(口角を引き下げる筋肉)にボトックスを打てば、引き下げる力が弱まり、口角が上がる」と説明されがちです。しかし、実際は一つの筋肉が、その名前の通りに単純に動いているわけではありません。

複雑な筋肉の動き

ボトックス治療で、意図しない場所(例えば、顎のシワを作る筋肉をターゲットにした際に少しずれてしまった場合など)に薬が効いてしまった時に、患者様から「うがいをするときに水が漏れる」という訴えが出ることがあります。これは、下唇を下に引っ張る筋肉である下唇下制筋にボトックスが作用してしまった場合に起こりやすい症状です。

冷静に考えると、うがいで口を閉じる動きは、唇を上に引き上げる動きであり、下制筋(下に引っ張る筋肉)の動きとは逆のはずです。下制筋を止めれば、むしろ口を閉じやすくなるように思えますが、水が漏れてしまうのです。

この現象が示唆するのは、下唇下制筋が単に「下へ引っ張る」だけでなく、口輪筋(口を閉じる筋肉)と連携し、唇を押し出すような複雑な動きに連動しているということです。筋肉は本来「縮む」(引っ張る)ことしかできないにもかかわらず、唇を押し出すような動きに関与しているこの複雑な構造を理解し、どこをどれだけ止めるかを細かく制御することが、ボトックス治療の奥深いポイントとなります。

患者様からのご質問

ヒアルロン酸と小顔治療

ここからは、ヒアルロン酸注入や小顔治療に関する患者様からのご質問にお答えします。

Q1. 高周波ハイフをしてから、ヒアルロン酸を溶かすのはどれくらいの期間を空ければ良いですか?

  1. ヒアルロン酸を溶かす(ヒアルロニダーゼを使用する)場合は、高周波やハイフの治療後にダウンタイム(腫れや内出血など)がなければ、翌日でも実施可能だと考えます。ヒアルロン酸溶解は、特に炎症が強く起こる心配が少ないためです。ただし、ヒアルロニダーゼによるアレルギーのリスクは、常に注意が必要ですし、現実的には一度何かしらの侵襲を加えた部位に新たな刺激、侵襲を加える治療は最低でも1~2週間ほどの間隔を空けると良いです。

Q2. ヒアルロン酸を打ち続けないと顔はたるみますか?足すばかりだと顔は大きくなりますか?

  1. 厳密に言えば、注入したヒアルロン酸が減れば顔はたるみますし、足すばかりだと顔が大きくなる可能性もあります。

しかし、現代のヒアルロン酸製剤は長期にわたり体内に残ることがわかっています。そのため、ヒアルロン酸が減ることによって見えてくるたるみは実際には長い期間を経た後になります。その上、以前のように短期間で無くなる前提で次々に追加注入を繰り返すと、リフトアップを維持することを越えてヒアルロン酸が蓄積して顔が大きくなるリスクもあります。

当院では、残っているヒアルロン酸の量を計算し、患者様の今の顔の状態を正しく分析した上で、「若々しく、かつ整えるために、どこにどれだけ補うべきか」を計算して治療を行います。この専門的なアプローチにより、顔を大きくすることなく、たるまないようにコントロールしていくことが可能です。

ヒアルロン酸を注入して顔が大きくなるかどうか、大きく見えるかどうかは、結局のところ注入する部位や量を骨格や状況に合わせて細かく設定し、正確に注入できるかどうかにかかっています。つまり、技術が高ければ顔を大きくしないように治療ができますが、技術が低ければ顔は大きくなってしまいます。

Q3. 「引き算」治療(減らす治療)をするなら何が良いですか?

  1. 「引き算」とは、顔の中で加齢によって増えていくものや不要なものを減らす治療です。

減らしたい対象は主に以下の3つです。

  1. 大きくなる筋肉

これはボトックス(ボツリヌス毒素)で筋肉を縮めます。今のところ筋肉を小さくする作用を持つのはボトックス注射(ボツリヌストキシン製剤)のみです。

2. 増えていく脂肪
脂肪吸引(オペによる除去)、脂肪溶解注射、またはハイフや高周波(熱で脂肪細胞を壊し縮める)といった方法を組み合わせて減らしていきます。

  1. 伸びていく皮膚

物理的に伸び切ってしまった皮膚に対しては、オペ(余剰分をカットする)が基本的な治療となります。ただし、皮膚のハリの減少が原因であれば、ヒアルロン酸注入やデバイス治療で改善できる場合もあります。

Q4. 糸(糸リフト)は小顔になりますか?

  1. 糸リフトは、純粋に「減らす」という引き算の治療ではありません。糸の主な役割は、落ちた皮膚を上へ引き上げること、そして不要な脂肪の膨らみをずらすことが得意です。減らす効果はないものの、非常に強いリフトアップ効果を持つため、やり方次第で非常に有効な治療です。

Q5. 小顔になるためにはどうすれば良いですか?

  1. 小顔治療は、患者様の顔を大きく見せている原因が何かを正確に分析することから始まります。
  • 原因が骨であれば、骨をカットします。
  • 原因が筋肉であれば、筋肉を縮めます(ボトックスなど)。
  • 原因が脂肪であれば、脂肪を減らします(脂肪吸引、脂肪溶解注射など)。

原因に応じて、これらの治療を組み合わせることが、最も効果的な小顔治療への道となります。

 

美容医療は、単に表面的な見た目を改善するだけでなく、顔の解剖学的な知識に基づき、複雑な筋肉の動きや加齢による変化を深く解析することが求められます。

ボトックスやヒアルロン酸について、さらに詳しく知りたい点や、患者様一人ひとりの顔の状態に応じた具体的な治療法についてご興味がありましたら、ぜひご相談ください。

 

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