たれ目院長ブログ 〜ヒアルロン酸注入の合併症、副作用を治すことができるヒアルロニダーゼの存在意義。〜

ヒアルロニダーゼ

今年に入ってから、他院で注入されたヒアルロン酸をヒアルロニダーゼで溶かす依頼が増えて、ヒアルロニダーゼのストックが少なくなってきたので追加発注をしました。前回の発注もそんなに前じゃないはずですが、それだけ使うペースが早いのでしょう。綺麗になるために注入したヒアルロン酸を溶かさなくてはいけない状況というのは残念なことですが仕方がないこともあります。

万が一の状況のために常備しているヒアルロニダーゼですが、院内の治療では使われなくて他院の治療後の修正にたくさん使われています。必ずしも変な形になったから、というものばかりではありません。客観的に見て変な形ではなくむしろ綺麗とも言えるけど本人の望む形ではなかった、という状況もよくあります。患者様とのコミュニケーションを深くしていたら避けられたかもしれません。

注入治療に関わるドクターや治療を楽しまれてる患者様、皆さんご存知のようにヒアルロン酸はヒアルロニダーゼという薬で溶解させることができます。溶けた分のヒアルロン酸は数時間も経たないうちになくなってしまいます。正確には分解されて吸収されるわけですが。

このヒアルロニダーゼの存在がヒアルロン酸を注入治療の中でメジャーな材料としています。よく考えてみてください。世の中たくさんの治療がありますが、治療した後にやっぱりなかったことにできる、元に戻れる治療というのはほとんど存在しません。

オペで戻すのは再手術ということになり、正確に言えば元に戻すのではなく新たに手術を加えて元の形に近づけることであって完全に手術前に戻すことはできません。

レーザー治療においても脱毛が完了した後にやっぱり毛がある状態に戻すことはできませんし、レーザーによって皮膚が火傷してしまった場合にはすぐに戻すことはできず、傷が治るのを待つしかありません。(脱毛は完了した後にやっぱり戻りたいという人はいないと思いますが…。)

注入治療における他のフィラー(注入素材)を考えても、治療前に戻すことができるのはほとんどありません。脂肪注入は定着した分はずっと残ります。コラーゲンはいずれ吸収されていきますがすぐに溶かす方法はありません。それでも時間が経てばいずれ吸収されるものはまだ良いですが、PRPに成長因子を加えた時の膨らみはそれを戻すどころか小さくするのも困難で、溶けない非吸収素材は注入したらもう元に戻す手段はありません。オペで除去しようとしても残る分はありますし傷も残ります。

何が言いたいかというと、注入治療の中で色々な選択肢があってそれぞれに特徴やメリットデメリットがありますが、元に戻せる、もしものことがあればすぐに溶かす手段がある、という一点だけを見てもヒアルロン酸には弱点やデメリットをひっくり返せるだけの安心感があるということ。これが私がヒアルロン酸を好きな理由です。

各注入材にはそれぞれのメリットがあり、ヒアルロン酸よりも良い特徴を持った注入材があります。しかし溶けません。もし思わぬ形になってしまっても元の形には戻すのは難しい。非吸収素材は綺麗な形にできた場合それがずっと残りますのでコスパは良いですが、万が一血流障害を起こした場合は溶かすことができないため、回復するのを待つしかありません。

注入治療と言ってもそれぞれのフィラーの特徴やリスクを理解した上で選択しなければいけません。良いことばかりに目を向けないで。それらを理解した上でそれぞれのメリットを優先してフィラーを選ぶのが重要であり、そうして選んだ治療はどれを選んでも正解です。メリットとデメリット、リスクをどのようなバランスにするかはドクターや患者様それぞれの考え方です。

注入治療で最も避けたい合併症は血流障害、塞栓です。血管の中にフィラーが注入されると血流が悪くなった部分の皮膚が変色したり壊死したりします。そうなる前にフィラーを除去して血流を再開させれば改善してきます。数あるフィラーの中で溶解剤があるのはヒアルロン酸だけ。脂肪に対しては一応溶解注射はありますがすぐに溶かせるわけではありません。時間がかかりますからヒアルロニダーゼでヒアルロン酸を溶かすのとは状況が異なります。

この塞栓という合併症は非常に厄介です。皮膚の壊死というのは実際に起こってしまうと非常に辛い状況となりますし、回復するにしても時間がかかったり痛みが続いたり、傷が残ってしまうこともあります。外科系の先生は時々勘違いをされていることもあるのですが、血管を切るのと詰まらせるのでは重大さが全く違います。血管は切れてもほとんどの場合他から迂回するように血管が繋がっていて血流が完全になくなることはないようにできている大丈夫なのです。

塞栓は最初から起こさないようにすることが大事ですが、医療に絶対はありません。針を刺す以上、ヒアルロン酸を体内に注入する以上、全ての合併症は発生する可能性があります。絶対に塞栓を起こすつもりはない、その気持ちは大事ですが、だからと言って万が一の備えをしなくていいわけではありません。絶対に起こさないけどもしもの場合のことも考えておく、矛盾していますがそれがプロの備えです。

ヒアルロニダーゼで溶かすことができるヒアルロン酸注入治療は、言ってみればバックすることができる車を運転するようなもの。考えてみてください。アクセルしかついてなくて前にしか進めない、後戻りのできない車とバックできる車、運転するならどちらに乗りたいか。前進しかできない車の運転は絶対にバックする必要がないように慎重に運転しないと危ないことになります。

後戻りができる、緊急時に対処する手段があるヒアルロン酸ですが、当然万能ではありません。定着した脂肪やちょうど良い形になったPRPなどに比べると、時間とともに吸収されていくため、狙った形を保とうとすれば定期的に注入する必要があります。以前のヒアルロン酸に比べてかなり長期間持続するようになったため、そんなに頻繁に注入する必要はありませんが、年単位で見ていくとやはり減っていくのはわかります。

私自身もまとまった注入治療をしてから1年半はそんなにたるみを感じませんでしたが、2年経つとやはり緩みを感じてまた治療をしたくなりました。目の上の重さ、法令線、全体のたるみ感を感じるようになりました。ただしこれには2年分の自然のたるみ変化も加わっているので必ずしもヒアルロン酸が吸収されたからだけではないと思いますが。

また、ヒアルロン酸はじわじわ吸収される、自分の本来のたるみと一緒に歳をとるように変化してくれるから違和感が出難い、時間が経ってもナチュラルだ。というのがヒアルロン酸の特徴でもあるわけですが、それをメリットと考えたとしても吸収されて減っていくという事実をなくせるものではありません。

ヒアルロン酸は万が一の際に溶かす手段があり元に戻れる治療。しかし吸収素材なので同じ形を保つためには定期的に補充する必要がある。長所も短所もどちらも事実です。治療を選択する際に考えるべきことです。治療のメリットとリスクのバランスをどのように設定するかは人それぞれです。何を優先するかをよく考えて選択するのが大事。もしそれでヒアルロン酸を選んで来られた場合、全身全霊全力全集中で持って治療していきます。

 

 

 

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