40歳も超えてくると自分の夢と現実のバランスがある程度は見えてきます。私は車が好きなので、クリスティアーノ・ロナウド選手がスーパーカーをずらっと並べてその日の気分で乗り換えたりするのに憧れるのですが、経済的にそれは全く現実的ではないことだとわかってきます。
それと同時に今後できるであろうこと、ある程度現実的な夢というのも見えてきます。私のこれからの夢は注入治療をもっともっと世に広めて、日本中のどこでも正しい注入治療が受けられるような時代になること。
私自身、Dr.DemaioのMDコードに出会ってから衝撃を受け、それまでやっていた注入治療を根底からひっくり返して学び、研究して、注入治療が根本的な若返り治療になり、それを応用することで年齢問わず輪郭治療やきれいに整えることが可能であることがわかってきました。
今私がしていることは私一人の力で得たものではなく、先人達が研究開発、時には失敗を乗り越えて積み上げられた医学の歴史を基にできています。先輩方から頂いたものを自分だけのものにしておくのではなく、今後注入治療を身につけたいと頑張る人達へと渡していきたいと思います。
その一環としてセミナーを開催したりアラガン社の指導医を務めたりしています。教えるなんて偉そうに言っていますが、勉強熱心なドクターがある程度努力すれば誰でも辿り着くものです。ただ、自分一人でそこまで行こうとすると時間がかかる上に下手するとちょっとした失敗を繰り返すこともあり、そこはすでに通過してきた先輩からの情報を取り入れて効率的に訓練することで、ある程度のレベルまでは失敗することなく最短でいくことができます。
そのうち、教えたドクターの中から指導医を超えるレベルまで研究する人や改良したり他の治療と組み合わせたりしてもっと高い効果を発揮する治療を開発する人も出てくるでしょう。それって教える人から見るとライバルを育てることになるので損してるように思われることがありますが、私はそれで良いと考えています。そうすることによって医療業界が健全に発展することは良いことですし、そもそも弟子が師匠を越えなければ業界は衰退するしかありません。
「青は藍より出でて藍より青し」
素晴らしいことじゃないですか。私、本気でこれを目指しています。今までレクチャーしていただいたドクターは尊敬しつつも絶対越えてやるという気合で研究を重ねました。逆に私がレクチャーさせてもらったドクターは私をどんどん越えていって欲しいと本気で思っています。だからこそ全力で包み隠さず全てお伝えするのです。
ただしこちらもそう簡単には越えられないように頑張りますが。3歩詰められても2歩先へ進む、そんな感じでまだまだ自分の腕も伸ばしていくつもりです。
注入治療を世に広めて、誰もが当たり前のように高いレベルの治療を受けられ、美容医療をオープンに話し合える時代にする、という私の夢のためには、自分一人でコツコツ治療していても遅過ぎます。より早く実現するためには施術者であるドクターの理解を高め、技術を高めること。それもセミナーで数人を対象に行うのでは遅くて、本当はもっと大多数に同時に伝えることが必要となります。
それは学会での発表や論文を書くこと。医学に身を捧げるのであればそこは避けては通れません。がしかし、学会や論文は私の苦手な範囲でして、どうしても後回しになってしまいます。はっきり言ってこれが私の問題点であり、欠点です。
論文を書き、学会で発表して本などにまとめれば、セミナーよりも多くのドクターに情報を伝えることができます。諸先輩方もそうして医療を発展させてきました。私の夢のためには不可欠であり重要な活動となります。
ドクターの仕事は実際に現場で治療にあたる「臨床」と、学会活動などを含めた「研究」に大別できます。どちらが上ということはなくてどちらも重要です。ただ、外来で頑張っても一人のドクターが1日に治療できる数には限りがあるのに対して、新しい治療法や新薬を開発すればそれは同時に臨床現場で使われるため、1日で数千人から数万人以上の治療ができることにつながります。逆にせっかく開発された治療法も現場で活用してくれるドクターがいなければ意味がないですので、やはりどちらも大事です。
医者の中にはそのどちらかを得意としていて、逆を苦手としている人がいます。あの先生はオペはめちゃくちゃ上手だけど論文は嫌いで一切書かない、とか、インパクトファクターはすごいのに虫垂炎のオペ一つまともにやったことはない、といった話はどこの医局でもあり得る話です。本当はどちらもバランスよく経験できると良いのでしょうが、苦手なものは苦手、嫌いなものは嫌い、もしくは自分は得意なもので医学に貢献できれば良い、といった感じでしょうか。
そこで私の話ですが、もうお分かりのように今まで現場での治療ばかりしてきたため、というか論文を書くことが好きでないこともあり、思いっきり臨床に偏っています。新井君、医者は論文書かないとダメだよ、論文書いてこそ医者だよ、とは過去に何度か先輩から言われたセリフ。
学会発表、論文も無視している訳ではないんです。一例報告からで良いから出してみようと思って症例写真を見ると、きれいに改善していることはわかるのですが論文用の写真としては条件が酷過ぎて使えない…。服装やヘアバンドがバラバラだったり角度がちょっと違ったりと。
そこをクリアすべく、実は3Dカメラを買いました!
(高かった…)
いやいや、そんなことにはめげない!ベクトラというカメラを買って、これからは完璧な症例写真を撮りまくります。いくつかメーカーがありましたがベクトラにしたのは、フラッシュの機能が高くて肌の写りが良いのと、なにより世界中のアラガンのファカルティーが使っているということから!
これで写真の問題はクリア。あとは文章力。
うーむ、これがまた悩ましい。私の考えは感覚的なことが多く、ドクターを目の前にして身振り手振りのジェスチャーで、擬音も加えて説明するとなんとなくは伝わるのですが、これを文書化して理論的に全て説明するとなると複雑怪奇で、長ったらしくて周りくどい文章になってしまう。
専門用語を駆使して説明すればそれも可能と思われますが、そこに必要なのはやはり「勉強」。はぁ〜、医者はどこまで行ってもやはり勉強しなくてはいけないのね。わかってはいましたが。医者は勉強して常に技術と情報をアップデートしていかないと遅れていきますが、情報を発信するのにも勉強する必要があります。
スーパーカーを駐車場にずらりと並べる夢はだいぶ非現実的ですが、注入治療を広めたいという夢は実現可能です。勉強と努力すれば。
注入治療は、老化現象の根本的な原因にアプローチしています。ということは、流行り廃りの治療ではなく、今後若返り治療においてメジャーな方法となっていくであろう治療法であり、ヒアルロン酸よりも良い素材が開発されても治療法自体は変わらないで発展していく可能性があります。また、その奥行きの深さを考えると、注入治療を広めていくことは私のライフワークとなりそうな予感がします。
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