院長ブログ ~ヒアルロニダーゼの実験~

腕の跡

ヒアルロニダーゼは生物由来のたんぱく製剤なのでアレルギーが多い薬です。確率を言うのは難しいですが、ある文献では重症のアレルギーは0.6%程度と書いてあるのを見たことがあります。かゆみや発赤などの軽いアレルギーはもっと多いと思われます。

Hylenex

当院では通常のヒアルロニダーゼもありますがアレルギーが少ないと言われるヒト由来のHYLENEXも常備しています。HYLENEXは1瓶に含まれる量が少ないため、大量に投与する場合は足りないので通常のヒアルロニダーゼも置いています。HYLENEXの反応をみるためにとりあえず自分の腕でアレルギーテストをしてみました。

HYLENEXは1バイアルに150単位と少ないため原液で使用します。1mlの液状なのでそのまま注射器で吸うだけと、使い方は簡単です。まず、0.05CCを左腕に皮内注射します。直後は何ともなく、30分経過したのが上の写真です。特に問題はなさそうでしたが、この後2時間ほど仕事していて気づいたら周りにわずかな赤みがありました。特にかゆいことはなく様子をみていたら半日ほどでそのわずかな赤みも消えました。

アレルギーテストの量は4単位から15単位必要だと、研究者によって異なります。どうせ遅発性のアレルギーや感作される問題もあるからテストは無駄で、少量ずつ様子見ながらうつしかないと言われる先生もいますが、私としてはあまりに感受性高い人を見極める意味でもテストはするべきかと思います。もちろんテストで問題なかったからといってもばんばん注射することはなく、かならず慎重に投与します。今回の0.05ccは7.5単位にあたるので、アレルギーテストの量としては少なくはなく、多くもなく、といった感じでしょうか。

次に、HYLENEXの量に対して溶かせるヒアルロン酸の量をみるべく実験してみました。プレートの上にヒアルロン酸を出し、HYLENEXと混ぜ合わせていきます。ここでは当院で一番使用するアラガン社のボリューマを使いました。

左側の粒々したゼリーがヒアルロン酸で、そこにHYLENEXを加えて混ぜると右側のように分解されて水になります。混ぜ合わせてから15分もしないうちに溶けてきて、写真はプレートを少し立てた状態ですが下に垂れてきているのがわかると思います。

溶ける量も調べてみました。ヒアルロン酸0.05ccに対してHYLENEX0.1ccでぎりぎり溶けました。ここから推察すると、ボリューマ0.1ccを溶かすのにヒアルロニダーゼは最低30単位必要であるとわかります。逆に言えば0.5cc程度のヒアルロン酸を溶かすのに通常のヒアルロニダーゼ1瓶1500単位を投与するのは多すぎる可能性があります。多過ぎてもヒアルロニダーゼの活性は48時間以内と言われ、自己のヒアルロン酸は数日単位で生産されるので特に問題はないですが。

もちろん、この実験は理想的な条件で行われており、体内で同じように広がり、働くかはわかりませんが、少なくとも治療する上での目安にはなると思います。これからのより安全、安心な注入治療の時代に向けて当院でも治療の精度を高めていきます。

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ラベールミラクリニック

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