たれ目院長ブログ ~医療と健康法の違い~

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医療と健康法は明確に異なりますが、時々それを混同している場合や、明らかにいい加減なことを言っている場面に遭遇するとちょっと残念に思う時があります。

 

私は以前に麻酔科医を経て外科医として癌治療を行っていました。総合病院で癌治療に携わる外科医は本当に激務で、朝から晩まで病院にいて、休みの日も病院で仕事したり緊急オペがあったりして、明るい時間は外に出ることがないような生活ですが、たまの休みの日にショッピングセンターに行った時のことです。とあるブースで50人ほどの人が集まって、何やらマイクで話す人の説明に盛り上がっていました。ブースを覗いて立ちながら聞いてみると、どうも皆が座っているベンチに特殊なマットが敷いてあって、そこから電磁波らしきものが出るとのこと。そこまでは健康商品として別にいいのですが、問題はその説明で、「座っているだけで血行が良くなる」「座っているだけで糖尿病もよくなる」と医学的な効能をはっきりと言ってしまっていること。

 

これはおそらく何らかの広告、商品説明に関する法律に抵触すると思いますし、それ以前に病気の正しい治療をさしおいて商品を売らんかなといい加減な説明をして、本当に治療が必要な人をミスリードしている危険性があります。この商品を信じて使ったあげく、糖尿病が進行しても誰も責任はとってくれません。もちろん、世の中にはまだ証明されていないだけで効果のある民間療法や治療法というのは存在し、それに対して医学的な知識や治療は科学的な理論、研究、根拠の元に成り立っています。本当に効果があると証明することは非常に大変で、膨大な時間と手間と費用がかかります。逆に効果が無いことであっても、俗にいう悪魔の証明と呼ばれるように無いことの証明はすることができません。それを逆手にとって、まだ現代医学ではわからない効果としていい加減な説明をするのは、いくら商売といえどもちょっとやり過ぎなのでは、と思ってしまいました。

 

ただ、そのブースでベンチに座っていた主に高齢者の方々は、商品の説明にけっこう感心して盛り上がっていた様子で、それもまた残念な気持ちになってしまいました。医療の問題点は必要のない治療や流れ作業的に行ってミスが発生することが問題であって、治療自体は意味のあるものです。糖尿病を例にとれば、ただ単に血糖を低下させる薬を処方するのは本質的な治療とは言えず、正しくは薬でサポートしながら運動療法、食事療法で血糖が上がらない体質、生活習慣に改善させることが最終的な治療となるはずです。しかしそこまでの時間と手間をなかなかかけられず、漫然と薬を飲み続ける治療になってしまうところに問題はありますが、高血糖状態が身体に与える悪影響を回避するために薬を使うこと自体は正しく科学的な治療であり、確実な効果も得られます。電磁波で糖尿病を治るなんていうマットと比べれば、医療は理論的にも科学的にも、さらには効果の確実性もわかっているリスクも、膨大な研究、臨床データも全く異なります。

 

私が医師になった頃はもうすでにメディアによる病院、医者叩きが盛大に行われていて、そのおかげでインフォームドコンセントがしっかりとして、ガイドラインに沿った治療が行われ、透明性の高い医療となっていました。研修制度がしっかりしたおかげでいい加減な治療が減り、全体的な医療レベルの底上げになったと思います。余談ですが、私が医師となる頃には製薬会社の接待はもうかなり廃れていて、患者様からの心づけという習慣も無くなっており、それが当たり前と思っていたので先輩ドクターから昔の話を聞くとバブル時代の話のようにちょっと信じられないエピソードにびっくりしてしまいます。

 

 

巷にあふれる健康法や健康商品は規制の厳しい医療とは異なり、広告で効果を過大に表現しがちなところがあり、それを信じてしまう、または信じるまではなくてもちょっといいかもと思ってしまう気持ちはよく理解できます。私自身も病気で闘病していた父が色々な健康食品やアガリスクなど病気を治す商品を使っていたのを見ており、家族としては少しでも可能性があるのであれば全ての方法を試したい、という気持ちが強かったのを覚えています。結果的にアガリスクは効果も体験談もデタラメだったとニュースで話題になりましたが、可能性を信じてやってみるのが大事でありやらなきゃよかったと後悔はしていません。しかし、病気が治る可能性があると言われれば根拠や効果の有無は関係なく頼ってしまうのが人の心理であり、そこにつけこんだ商品やビジネスというのは弱者にたかるような行為に見えてちょっと残念です。

 

 

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