たれ目院長ブログ 〜注入治療専門として、針の一刺しにかける思い。もはやオタクです。〜

注射が嫌だという理由の上位に上がってくるものとして「痛いから」があります。注入治療はダウンタイムも負担も非常に少ない治療ですが、針を刺す以上どうしてもその影響は避けられません。

 

痛みはゼロにはできませんが、限りなくゼロに近づけることはできます。まず、人体が痛みを感じる仕組みを理解します。痛みは神経に刺激が加わり、それが脳へ伝えられて痛みと認識した時に「痛い」と感じます。ですからまずは痛いと感じ難いようにリラックスしてもらい、治療の理解を高め、緊張を取って神経が過敏に反応しないようにします。

最初の一刺しで思ったよりも痛く無いことを理解してもらうことでその後の痛みも大きく変わってきます。そして針はできるだけ細いものを選び、時には特注の道具も使用します。

針を刺すとなぜ痛いのか。実は皮膚や体の組織を針が裂いていくと痛みを感じやすいため、針をゆっくりと動かすことで痛みを減らすことができます。ちょっと難しいことを言うと、針で組織を裂くのではなく、針先の圧力に負けて組織の結合が解けて離れるのを待つように針先を動かすのです。

そしてさらに、針を刺している間に身体に別の刺激を加えることで注射の痛みを減らします。ある意味脳をダマすわけです。その刺激は軽いヘッドマッサージでもいいですし注射部位近くをタッピングや圧迫で刺激するのでも十分です。

人の脳というのは思ったよりもダマされやすいため、そのようなテクニックを集めることは大事です。目を閉じた人に、これは火ですよと言って氷を当てると「熱い」と反応するように、人は思い込みや周りの環境ですぐにダマされるのでそれを利用するのです。

このように、人が痛いと感じ難いような環境を作り、さらに別の刺激で痛みをごまかし、その上で針の操作をゆっくりと丁寧に行うと最小限の痛みで注射することが可能となります。

以上は現実的なテクニック。ここからはさらにディープなオタク話として、痛みをほぼ無くす方法について。

実は痛みをほぼ、部位によっては限りなくゼロにすることは可能です。さっきまでのテクニックをより洗練させてもっと細かい方法を加えていきます。

一気に説明すると、まず麻酔クリームを塗って十分時間をおき、注射の前に氷で冷やし、皮膚がジンジンと麻痺している間に局所麻酔をうってしまい、さらに針を刺すときに毛穴から針先を挿入し、針をわずかに回しながらゆっくりと進め、横にブレることなく真っ直ぐに刺して真っ直ぐに抜く、抜く際もゆっくりと行うこと。注射する部位の近くは左手で圧迫して止血と同時に別刺激で注射の痛みを無くす。

となります。ちょっと解説すると、針を回すのは静止摩擦よりも動摩擦の方が少ないためで、針の筒に皮膚や組織が擦れると痛みが発生するのでそれを減らします。ただ真っ直ぐに押すと針の筒部に皮膚などが引っ張られて刺激となります。

針がブレると余計な痛みが発生するので真っ直ぐに最短距離を進みます。そのスピードは極めて遅く、一箇所刺すのに数分かける勢いで。細かく言えば針を「刺す」のではなく、針先を組織にじんわりと押し当てて待つと組織がフワッと裂けて道が開けていきますのでそれを繰り返しながら少しずつ、少しずつ進めていきます。

針を抜く時も油断してはいけません。針や早くスパッと動かした方が痛みが少ないから、と言うドクターがよくいますが、早く動かせば痛みの時間が減るだけで、痛みは減りません。逆に一瞬とは言え増大することもあります。ゆっくりと無駄に組織を傷つけずに正確な動きで抜くこと。大事です。

以上のテクニックをフル活用すれば無痛治療は可能となりますが、最新の注入治療は顔中に分散させて注射します。一箇所にこれだけの手間と時間をかけてしまうと通常は30分程度の治療が2〜3時間かかってしまいます。そうなるとちょっと現実的ではなくなるので、実際には極力無痛治療の要素を取り入れながら現実的な時間内で処置が終われるように考えながら行っていきます。

「痛み」だけでなく、注射には避けられない「皮下出血」の問題など、ある程度当たり前で仕方がないと思われるものに対しても極力少なくできないか、あわよくばゼロにできないかとこだわって日々治療しています。針一刺しにこだわり過ぎとも思われますが、いいんです。職人はオタクでいいんです。職人がこだわって何が悪いんでしょうか(笑)

経営はなんとかなります…多分

 

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