ヒアルロン酸やボトックスといった美容医療の注入治療は、外科手術に比べると、医師にとって取りかかりやすい手技です。初めて美容医療を勉強する医師にとっても導入のハードルが比較的低い印象を持たれがちですが、実は非常に奥が深い治療分野でもあります。どこまで追求するか、どこまで極められるかは、まさに医師次第。技術と知識、そして経験の積み重ねが問われる、奥深い世界です。
その一方で、どんなに経験を積んでも、どれほど追求しても、患者さんに医療を提供する以上、結果には常に「完璧さ」が求められます。失敗は許されず、100点でなければならない——そういう緊張感の中で日々の診療を行っています。
でも同時に、常に100点というのは、その時点で「止まっている」ことでもあると思っています。
過去の自分なら「これは完璧だ」と思えた施術が、今の自分から見ると「70点かもしれない」と感じる瞬間があります。そんなときは、正直落ち込みますし、今でも些細なことを長く引きずってしまうこともあります。でも、それを患者さんの前で見せることはありません。そういう葛藤は、自分自身との静かな戦いの中で消化するものだと思っています。
医師にゴールはありません。そのことを強く感じたのは、医師になって3年目の頃でした。ある症例で「もしこれが私じゃなければ、もっと良い結果になったんじゃないか」と悩んだことがあります。そのとき、10年以上キャリアのある先輩に相談したところ、返ってきた言葉が今でも忘れられません。
「今でも俺はそう思うことがあるよ。でも、そう思うからこそ、もがき続けるし、勉強もし続ける。」
当時も心に響いた言葉でしたが、年数を経た今は、その意味がもっと深く、自分の中に染み込んでいます。
日々、自分の技術に満足できず、理想とのギャップに悩みながらも、それでも前を向いて、より良い医療を提供できるように努力を続ける。それが医師の仕事であり、終わることのない修行なのだと思う医師13年目の今日この頃です。
医師にゴールはないー医師13年目にしみじみ思う
