安全への取り組みとリスクの現実
私はこれまで「ラベールミラクリニック」で5年以上勤務し、多くの注入治療を経験してきました。
院長の新井先生は「安全を最優先」に掲げ、実践できることはすべて取り組まれており、そのもとで学んだ私は大きな合併症を起こすことなく経験を重ねてきました。
しかし、注入治療も医療である以上、合併症のリスクを完全にゼロにすることはできません。だからこそ「リスクを最小限にする努力」と同時に、「万が一起きた場合の治療・対策」を学び続ける必要があります。
新井先生のもとには全国から多くの相談が寄せられ、その中には重症例も含まれます。そうした症例の治療に一緒に取り組ませていただいた経験は、私にとって非常に貴重な学びとなりました。
論文掲載のご報告
このたび、その経験の一部をまとめた症例報告が、Plastic and Reconstructive Surgery – Global Open (PRS Global Open) に掲載されました。
本誌は、米国形成外科学会(American Society of Plastic Surgeons: ASPS)が発行する世界的に権威あるオープンアクセスジャーナルです。
論文のテーマは 「ヒアルロン酸による血管合併症の治療」 です。
今回の症例の特徴
血管塞栓は合併症の中でも特に注意が必要で、「迅速な対応」が回復の鍵となります。
今回報告した症例は、治療開始が遅れたにもかかわらず皮膚の改善が得られた稀なケースでした。(本格的な治療を開始できたのは施術後3日目からでした。)
治療ではヒアルロニダーゼを使用し、従来の報告より多い量を投与しました(施術後7日目までに総量20,000単位以上)。中等度以上の塞栓であったにもかかわらず、予想以上の回復が認められました。
この経験を世界に共有することで、同じような状況に直面した先生方の治療判断の一助になることを願っています。
臨床経験を活かしたアドバイス
2023年より、私はアラガン社より依頼を受けて注入指導医を務め、全国の先生方へテクニックや知識をお伝えしてきました。
その過程で、治療に関する相談を受ける機会が増えています(直接のご縁がなかった先生から突然ご連絡をいただくこともありますので、ご希望があればお気軽にご相談ください)。
今回の症例経験の後に寄せられた治療開始が遅れてしまった中等度以上と予測される塞栓相談では、
「諦めずに治療を継続すること」「高容量のヒアルロニダーゼを使用すること」
といった具体的な助言を行うことができました。また、塞栓か否かの判断に迷うケースでも、臨床経験をもとにアドバイスをさせていただいています。もちろん、自分の知識や経験だけで確信が持てない場合は、新井先生をはじめ尊敬する先生方にも相談させていただき、その度に私自身も学びを深めています。医療に「学びの終わりはない」と強く感じています。
感謝の気持ち
今回の発表にあたり、貴重な経験を共有しご支援くださった インド Anticlock Medispa の Kapoor先生、そして ラベールミラクリニックの新井先生 に心より感謝申し上げます。
このお二人がいなければ、臨床経験を世界へ発信することはできませんでした。
また、症例報告の掲載にご協力いただいた患者様、Kapoor先生とのご縁を繋いでくださった方々にも深く感謝申し上げます。
改めて、私は本当に多くの方々に支えられていると実感しています。ありがとうございました。