「ヒアルロン酸治療の合併症〜遅発性有害事象〜」

近年、インターネットの普及、そして最近ではSNSの普及により、患者さんが医療情報を得やすくなった一方で、誤った情報を手にしてしまうケースも増加しています。特に美容医療は自由診療であるため、各クリニックや医師が自院の治療をアピールする目的で情報発信を行い、情報が溢れかえっています。
ヒアルロン酸治療に関する合併症の情報も発信されており、当院に来られる患者さんの中には、事前に合併症について調べ、自ら質問される方が増えている印象があります。

ヒアルロン酸治療にはいくつかの合併症がありますが、最近特に「遅発性有害事象」について質問を受けることが多くなっています。
「遅発性有害事象」とは、その名の通り、治療後1ヶ月以上経過してから突然ヒアルロン酸を注入した部位が腫れるという合併症です。「遅発性アレルギー」とも呼ばれることがありますが、アレルギーかどうかは明確ではないため、最近では「遅発性有害事象」という表現が一般的になっています。
症状には個人差があり、触れると少し腫れていると感じる程度で翌日には改善する軽度のものから、外出できないほど腫れて痛みを伴う重度のものまで、さまざまです。

「SNSで最近よく見かけるのですが、この種類のヒアルロン酸製剤は遅発性有害事象が多いのでしょうか?」と患者さんに聞かれることがあります。その際の答えとしては、「この製剤は使用頻度が高いため、有害事象の報告件数も多いですが、製剤自体が原因かどうかはまだはっきりしていません」とお伝えしています。

今のところ、遅発性有害事象の原因ははっきりとはわかっていません。

考えられている主な要因は次の3つです。
①製品の要因
②患者さんの要因
③施術の要因

①製品の要因
多く報告がされている製剤には、ヒアルロン酸をゼリー状にするためのBDDEという架橋材が他の製剤よりも多く含まれているため、それが原因ではないかという説があります。BDDEが多く含まれることによって有害事象が起こるのだとしたら、同じ人が再び有害事象を起こす可能性が考えられますが、再発例は多くはありません。

②患者さんの要因
遅発性有害事象には体調不良やワクチン接種後など何かしらのトリガーがある傾向があります。このことから、ケロイド体質の方やアレルギー素因を持っている方などはリスクが高いのではないかと推測されますが、これはあくまで推測の域です。

③施術の要因
最近では、施術に微細な感染が起き、それが時間をかけて症状として出るのではないかという説もあります。


製品が原因だと考えているドクターもいますが、それは現時点では感覚的な意見に過ぎません。しかし、その感覚は今後の医療の発展にすごく大事です。疑問や仮説から研究が始まり、医療は進歩していくからです。
ただ、今はまだ確定していないため、さまざまな可能性を考え、考えられる全ての対策をしておくのが最善だと思っています。
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もし、遅発性有害事象が起きた場合はすぐに主治医に連絡をしていただきたいです。
現時点では、私は遅発性有害事象は早めに対処すれば、改善するものだと思っております。

ヒアルロン酸治療は優れた治療です。医療である以上、合併症のリスクは避けられませんが、それを上回るメリットが大きいと思っております。
そして私もヒアルロン酸治療を受けている1人です。みなさんにも、この治療について正しく理解していただけたらなと思います。

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