たれ目院長ブログ 〜注入している間に私が考えていること考えていること。オタク的内容です。〜

施術している間、真剣な顔して注射している私が何を考えているのか。今日のお昼ご飯は何にしよう、なんてことは考えていませんよ。ひたすら目の前の治療、一刺し一刺しをとにかく安全に正しく効果的に注入できることだけを考えています。その瞬間は次の患者様のことも明日の天気のことも世界平和のことも、他の全てのことが頭から飛んでいってます。

まずはヒアルロン酸の注射器、シリンジと呼びますがそれに針をセットする時からもう治療は始まっています。針は体内へと刺されるものなので、どこにも触れずに完全に清潔を保つように気を使います。それからシリンジを手に取って最初の注入ポイントを見て、さらに手で触れて皮膚の奥にある脂肪、筋肉、骨の形を確かめてから外さないように慎重に刺し始めます。

皮膚に針を刺す部分は、無用な出血を避けるためにできるだけ皮静脈を目視で見つけて外し、さらには毛穴を探します。というのは針は毛穴から刺した方が痛みは少ないからです。ようやく皮膚に針を刺してからは、ゆっくりと針を進めながら皮膚を貫き、脂肪の中を進み、筋肉や筋膜、靭帯を貫く感触を確かめながら骨まで針先を進めます。この時に大事なのはゆっくりと進めることと無駄な動きを極力排除すること。針が横へブレたりすると痛みが強くなりますし、針を早く動かすのも痛みが強くなりやすいからです。

意外かもしれませんが、針は実はゆっくりと動かしたほうが痛みは少ないのです。痛みの時間が短い方が苦痛が少ないだろうと、スッと動かすと実は痛みが発生します。針を動かして組織を割くのではなく、針先の圧力に負けて組織の結合が解けるのを待つ、くらいのイメージでじわっと針先を押し付けていくと、少しずつ針が進んでいきます。

針先が進む間は針から伝わってくる感触や患者様の痛がる反応などを見ながら、針が思ってもいないところへ進んでいないか、重要な組織や神経を万が一傷つけていないか、他にも様々な状況を想定し、リスクを避けて安全に進めているかを考えながら動かしています。

ようやく針先が骨に当たった時、その瞬間も色々なことを考えます。まず針先が骨にヒットした瞬間の感触から、骨面が平らなのか斜めに当たっているのか、針先のベベルというカットされた面と接触した瞬間の僅かな滑りからどういう角度、形で骨に当たっているのかを見極めます。それがイメージ通りになっていると思ったら次の操作に移ります。次に行うのは注入、ではなくてその前の重要な作業、アスピレーションです。

アスピレーションとはシリンにに陰圧をかけて逆血がないかを確認する作業。もしもこれで血液の逆流があれば針先は血管に当たっている可能性があり、そのまま注入すると塞栓という合併症を起こす可能性が高くなります。塞栓は血管の血流を阻害し、ひどい時は皮膚壊死や失明を起こしかねない重大な合併症です。

アスピレーションで全ての塞栓を防げる訳ではありませんが、しっかりとアスピレーションを行うことでかなり高い確率で血管に当たっているかどうかを確かめることができます。質の良いヒアルロン酸を使っていれば。

この数秒の作業を、時間と手間を惜しまずに丁寧に行うかサボるかで安全度は格段に違いが出てきます。手間を惜しまずリスクを避けて安全度の高い方法をちゃんと守り、生涯に渡って重大な合併症を起こさずに注入治療をしているドクターも多くいることでしょう。

アスピレーションをして血液の逆流がないことを確認したらやっとやっと注入作業が始まります。シリンジの押し出す棒、プランジャーを押していくのですが、これもゆっくりゆっくりと押し進めます。早く進めると痛みが出たり、万が一血管に近い場合には早く入れることでヒアルロン酸の圧力が高まり、それによって血流障害を起こしてしまう可能性もあるので、とにかくゆっくりと注入していきます。

手技は早くした方が上手い、カッコ良いという風潮が一部であるようですが、とんでもありません。早くして良いことは何一つありません。せいぜいウデが良く見えることぐらい。万が一針先が血管に触れていた場合、早く注入すると一瞬で大量のヒアルロン酸が血管内に入り、塞栓が完成してしまいます。ゆっくりと注入していれば異変に気づいた時に手を止めて、被害を最小限で食い止めることができます。

ゆっくりと注入している間も頭は休んでいられません。注入したヒアルロン酸が万が一にも血管を圧迫したりしていないか、注入している周りの皮膚の色が変化しないか、注入部位から離れていても血流に沿ってヒアルロン酸が流れることがあるので、下流の部位の皮膚色の変化も絶えず観察します。同時に注入した量の変化がちゃんと出るかどうかも。

例え0.01ccという微量であっても注入されればそこに膨らみができたり皮膚の凹みに変化が起きます。たった0.01ccであっても0.01cc分の変化は必ず出ます。その変化を見るだけでなく近くに置いた左手指でも感じ取ります。注意していれば皮膚を通して注入された分のヒアルロン酸の圧力を感じ取ることができます。もし注入した量に応じた変化が見えなかったり感じ取れなかったらすぐ手を止めて、再度アスピレーションで確認したり針先を微妙にずらしたり、最終的には一度針を抜いて刺し直すこともあります。

予定の場所に予定量の注入を無事に終えたら針を抜いていくのですが、ここでも気を抜きません。痛みや出血が最小限になるように、無駄な動きを抑えて針のルートに沿ってまっすぐ、ゆっくりと抜いていきます。針が完全に抜けたら今度は止血です。人の皮膚、体内には血管がないところはありませんので、針を刺しても出血を0%にする、ということはできません。大事なのは出血を0にするなんて夢物語ではなく、どれだけ最小限に抑えるか。

出血は全てがアオタンのように痕に残ってしまうわけではありません。出血してもすぐに押さえて止血すれば大半のものは痕になりません。ただしこの圧迫止血はまた手間と時間がかかります。しっかりと丁寧に止血すれば内出血も減らせるのですが、時間を優先して治療を急ぐとどうしても確率が高くなります。

大変長々と書きましたが、以上の流れでようやく一箇所の治療となります。実際には上記の作業を数分以内に行い、それを気を抜くことなく顔中、20〜30箇所に繰り返します。そのどれ一つとっても気を抜いたり手を抜くことはありません。最初の部位と最後に注射する部位では注意力に差はなく、全てのポイントを集中力100%で行います。全く気を抜くことができません。

ですから治療が終わるとぐったりとしてしまいます。時間もかかりますので、1日で10人治療などできません。私のやり方では。でもどの作業も省くことができませんし、リスクを冒してスピードを上げることもできません。ひたすら丁寧に最も安全でリスクが少ないとされる方法を実直に丁寧に繰り返します。

普段施術をしている間に考えている色々なことでした。瞬間的かつ同時に様々な情報を頭の中で処理しながら目の前のことに集中する、最初は大変ですが慣れると意外とできるものです。人間、訓練でけっこうなんとかなるものです。

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