たれ目院長ブログ 〜美容なんでも相談の意外な反応と結果〜

コロナ禍における自粛生活の中で、少しでも悩める人の助けになれればとの思いで始めた「美容なんでも相談」、思ったよりも問い合わせが多くて、皆さん本当は専門家に色々と相談したいことがあるんだなと思いました。普段の診療では医師とそんなに話す時間は無いことを考えると有意義な時間にしてもらえたかと思います。

相談は様々ですが、私が注入治療専門として指導医もしているためか、やはりヒアルロン酸注入とボトックス注射に関する相談が中心でした。ヒアルロン酸、ボトックス、いまだに適切でない射ち方をしてると思われるクリニックは結構あるようで、ボトックス後、ヒアルロン酸注射後のお悩みを聞くことが多く、私の専門であり得意分野ですので話をしていたらあっという間に1時間ほど経ってしまいます。

今回の取り組みでわかったことは、テレビ電話を使った診察、カウンセリングが思ったよりもしっかりとできそうだということ。主に使用しているのはLINE電話とZOOMですが、相手の顔を見て観察できるため細かい表情の動きやクセがよくわかります。注入治療は顔のラインや凹凸といった面と、シワを作り印象を決める表情のコントロールが治療の肝となります。その表情の動きをある程度観察できることは大変有益な情報となります。

ただし、もう一つの要素であるラインや面のコントロールに関しては、かなり細かい凹凸や皮膚の起伏、さらには影の入りかたなどまで細かく観察する必要があり、さすがにテレビ電話の画質ではそこまでの観察は難しいところですが、メールなどで別途写真を送ってもらい、それを見ながら話をしていくと細かい症状や具体的な改善方法までも話をすることができました。

実際に診察してからでないと決定的なお話しをすることはできませんが、テレビ電話と写真を活用することで結構具体的な診察はできそうということが今回の取り組みでわかりましたので、今後の本格的なオンライン診療の導入を検討するにあたって良い参考になりました。

美容なんでも相談を受け付けてみての印象は、世の中にはまだまだ従来の古い治療を漫然と行っているケースがあるということ。古いことが悪いわけではありませんが、日進月歩の医療において、より良い治療法が日々新しく検討され、生まれています。専門家であるドクターは研鑽を積んで患者様のためにより良い治療を提供、提案できるようにしておくことが大切だと考えます。

また、適切な治療が施されていても、患者様の悩みとズレていたり、治療の特徴やその後に必要な治療の説明が不足していて、結果的に患者様が満足されていない、治療して良かったのか、追加の治療をすべきなのか迷っている、というように不安がずっと残って悩まれているケースもあります。

ヒアルロン酸もボトックスも、ただ施術するだけではダメです。患者様の悩みを正確に汲み取り、本当に悩む症状を改善するために必要な治療を正確に導き出し、かつそれをどの程度施すかというのを患者様とよく相談して決める必要があります。

せっかく正しい治療であっても、その治療する意味、または予算等の問題で必要な治療を部分的に行っているということを正しく説明していない場合、患者様はあまり満足されず、本当に治療して良かったのかと疑心暗鬼になってしまいます。ヒアルロン酸注入治療においてはそこが難しいところで、フルコースの治療をすると若くキレイなお顔にできるというドクターが、その中で部分的な治療を施す場合に、セオリー通りの順番で施術すると当然治療途中の中途半端な状態となります。いくら自然な若返り治療が可能なヒアルロン酸注入といえど、治療途中のお顔は必ずしもバランス良いとは言えません。

そのような場合には、その部分的な治療が終わった状態はまだ途中であり、その後の治療によってどれくらいナチュラルで綺麗な表情となるかをよく説明しておかなければいけませんし、もっと言えばその部分的な治療の場合にはあえてセオリーから外してでも、各治療毎でバランス良いお顔にしながら追加治療をしていくことが求められます。簡単に言っていますが結構難しい作業です。

例えばしっかりと治療するためにはヒアルロン酸が15cc必要な方に、5ccずつの3段階に分けて治療する場合、5cc、10ccの治療が終わった状態でしばらく過ごすことを考えるとその都度違和感のないバランス良い状態に施術しておく必要があります。15ccを一度に治療する場合には途中のアンバランスな状態は考えなくても良いので、一度に治療する場合と分けて治療する場合とでは自ずと治療ポイントが変わってくるわけです。

また、必ずしも全ての人か提案された治療全てを受けるわけではありません。悩みの改善に15cc必要だとしても予算的な問題で3ccの治療をする状況や、はたまた患者様本人が100%の改善までは望んでおらず、少し改善すれば満足、という状況もあります。その場合には与えられた量で患者様の悩みを最大限改善し、かつそれでいて全体のバランスを崩さずナチュラルに仕上げ、その上にもし今後に追加治療を希望された場合には確実に効果を上乗せできるような流れを考えて治療プランを組み立てる、という作業を同時に頭の中で考えながら行う、ちょっとした離れ業をする必要があります。

もちろん、そんな複雑なことを考えていることを顔に出して悩みながら治療をすると患者様が不安になるので、表面上は当たり前のことをサラッとしている、という雰囲気で行います。この複雑な作業で時間をかけずに大雑把に処置したり、患者様への説明が足りないと、治療後にナチュラルに良くなるあの感動が得られません。治療がバチッと決まると、施術後に鏡を見られた患者様のあっと驚く感動が見られます。これがあるからやめられないというか、この治療にハマってしまったのでしょう。

巷では、ヒアルロン酸注入が早いことを良しとするクリニックや患者様と会うことがありますが、早く施術することは難しいことではなく、私にとっては大きな意味を持ちません。早く施術しろと言われたらどれだけでも早く施術することはできます。もともと外科医として胸やお腹の大きなオペをしていた私にとっては注射という施術自体は非常に簡単な手技に入ります。

しかし注入治療において大事なのは早く施術することではなく、最も怖い塞栓というリスクを最大限避けながら、それでいて極めてナチュラルな仕上がりとすること。しかも治療に伴う痛みや皮下出血といった副作用もできるだけ減らしたほうが良いのは言うまでもありません。注入治療は自由度が高過ぎるがゆえに技術だけでなく色々なことを考えながら進めていくことが大切であり、それが他の治療に比べて難しくさせるポイントなのですが、大変なことをやるからこその専門家です。私は常にそうありたいと思います。

 

 

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