当院で採用しているアラガン社のヒアルロン酸3種類のサンプルと2種類のヒアルロニダーゼでどのように溶けるかを実験をしてみました。今日は写真が多いです。ヒアルロン酸はバイクロス技術により適度な弾力と長期持続性を実現した「ボリューマ」と、やや柔らかい「ウルトラプラス」、唇などに使用する最も柔らかい「ウルトラ」の3種類。ヒアルロニダーゼはウシ由来の「リポラーゼ」とヒト由来の「HYLENEX(ヒレネックス)」を用意。
まずはヒアルロン酸を0.05ccずつ置き、
そこにヒアルロニダーゼをそれぞれ0.05cc、7.5単位ずつ加えていきます。HYLENEXは1ccに150単位ですので、原液のまま使用しますが、リポラーゼは1バイアル1500単位なので希釈して同じ濃度にしました。
ヒアルロニダーゼと混ざってすぐから反応は起こります。
ゼリー状で粘度の高かったヒアルロン酸はややぷるんとして透明度が増します。
まだ塊ではありますが、針で持ち上げようとしても抜けてしまって持ち上がりません。ヒアルロニダーゼを加える前であればヒアルロン酸は餅のように塊として持ち上げられます。
20分ほど経つとさらに粘度が下がってきましたがまだヒアルロン酸の塊はあります。
そこでそれぞれにさらに0.05cc、7.5単位を追加して加えます。
この量だとだいぶヒアルロン酸が溶けてきた感があります。
拡大してみると塊感がほとんど無くなっているのがわかります。探ってみるとまだ少しだけヒアルロン酸が残ってました。ちなみにリポラーゼとHYLENEXでヒアルロン酸の溶け方には特に差は見られませんでした。
HYLENEXのサンプルが無くなったので、リポラーゼのみさらに0.05cc、7.5単位を加えました。
そうするとヒアルロン酸はほぼ溶けて水となりました。写真の中で左側にあるのは比較用に置いたヒアルロン酸サンプルです。
プレートを傾けると垂れてきます。見た目はもう水ですね。
以前の実験ではヒアルロン酸0.05㏄がHYLENEX0.1ccで溶けましたが、これだけの微量の実験なので誤差が出たかもしれません。結論として、0.05ccのヒアルロン酸を溶かすのには15単位でほとんど溶け、22.5単位では完全に溶けることがわかりました。ヒアルロニダーゼは0.1ccで15単位としてるので、この濃度であれば注入したヒアルロン酸の倍量で適度に溶け、1.5倍量でほぼ溶けるということになります。
ヒアルロニダーゼを注射する時は1000単位~1500単位近く使用している場合がありますが、これだと3~5ccほどのヒアルロン酸を溶かす量のため、実際には量が多すぎる可能性があります。ただ、ヒアルロニダーゼの効果は48時間以内と言われ、自分のヒアルロン酸を溶かし続けて凹みができてしまうということはありません。また、自分のヒアルロン酸は数日で産生されるため、ヒアルロン酸を溶かした後に一時的にボリュームが減ってもまた数日で回復してきます。
今回の実験では体外で理想的な状態でヒアルロン酸とヒアルロニダーゼが混ざり合うようにしているので、実際の治療ではこのような経過になるとは限りません。現実では、ヒアルロン酸は広範囲に存在する場合、ヒアルロニダーゼがそのすべてに上手く混ざり合うとは限りませんし、注入して時間が経っていると一部は吸収され、最初に注入した量より減っていることもあります。もっと言えば他院で治療した場合は注入されたヒアルロン酸の量が正確に把握できないこともあります。そのため、他院でヒアルロン酸注入後の溶解治療をする場合はよく問診をして、計算した量を様子を見ながら注射していきます。
一般的に使われるヒアルロニダーゼとヒト由来のHYLENEXではヒアルロン酸を溶かす効果には大きな違いは見られませんでした。となると大きな差はやはりアレルギーのリスクの差になります。ヒアルロニダーゼはアレルギーが起こりやすく、まれに重症化することもあります。多生物由来だからということもありますが、製造の過程で不純物が多いことも原因とされています。実際にヒアルロン酸を溶かす場合は実験で使用した量よりも多く使用し、量が増えるほどやはりアレルギーのリスクも上がるため、ヒト由来でアレルギーが少ないと言われるHYLENEXはいざという時のリスクを下げるので安心ですね。ウシ、羊由来のヒアルロニダーゼでアレルギーが発生しない人はそれらでも大丈夫ですが、何回か使用することにより感作され、ある時急にアレルギーが出ることもあるので少し注意が必要です。
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