突然ですが、皆さんはどんなアルバイトをしたことがありますか?
私はというと、家庭教師のアルバイトを少ししたことがあるくらいで、ほとんど経験がありません。高校時代はアルバイト禁止の学校でしたし、大学に入ってからも部活や勉強が忙しくて、アルバイトをする時間はほとんどありませんでした。
そんな環境で育ったこともあり、小さい頃から似たような価値観を持った人たちと一緒に過ごしてきました。社会に出るまで、いわゆる“世間”をあまり知らないまま医者になったんです。
(実は、こういう医者って意外と少なくないんじゃないかなと思っています。)
社会を知らないまま社会人になった
社会人になってから、いや、実際には大学生の途中くらいからでしょうか。なんとなく「私、何にも知らないな」というモヤモヤを感じ始めました。
何がきっかけだったかは覚えていません。でも、「このままじゃダメだ」と恥ずかしさを感じたことだけは覚えています。それからは、意識的にいろんなジャンルの本を読んだり、積極的にいろんな人と交流しようと心掛けるようになりました。
もちろん今でも、知らないことに出会うたびに「恥ずかしいなぁ」と思うことは多いです。でも、知らなかったことを知るたびに、人生がどんどん色鮮やかになっていくような気がしています。
これって、哲学者ソクラテスの言葉でいう「無知の知」(「不知の自覚」とも言われます)だなと最近よく思います。当時の自分がこのことに気づけて本当によかったです。
知らないことは罪?
ソクラテスにはもう一つ有名な言葉があります。「無知は罪」——。(一部を抜粋しています。)
この言葉は、特に仕事をする上ですごく意識しています。医療の現場では「知らなかった」は絶対に許されないからです。
たとえば、美容医療の注入治療では「塞栓(そくせん)」という合併症があります。これはヒアルロン酸が血管を塞いでしまう非常に重篤な合併症です。もし万が一、医師が「ここに血管があるなんて知らなかった」「塞栓が起きるなんて知らなかった」と言ったとしたら、患者さんは「は?」って思いますよね。
もちろん、医学は日々進歩しています。今わからないこと、今はそう思われているけれど今後覆ることもたくさんあります。それでも、少なくとも今わかっていることはきちんと知っておくべきだと私は思います。
「知らない」ことを自覚する大切さ
私は「知らない」ことを自覚するために、常に自分に「なぜ?」「本当に?」と問いかけるようにしています。いわゆるソクラテスの問答法ですね。
そしてもう一つ大切にしているのは、
* 「知らないことを知らないと言える勇気を持つ」
* 「知らないことをそのままにしない」
* 「変なプライドを持たない」
この3つです。
最近、ありがたいことに人に教える機会が増えてきました。その中で、自分の立場的に「わからない」と言いにくく感じることもあります。でも、わからないことは勇気を持って「わからない」と伝え、教えを乞うことが大切だと改めて思っています。
先日も「わからない」と素直に伝えたことで、適切なアドバイスを受けることができました。これからも、この姿勢を大切にしていきたいと思っています。
身近なソクラテス
ちなみに、私の身近にはソクラテスのような人がいます。それはラベールクリニック院長の新井先生です(笑)。
新井先生はいつも「なぜ?」「なぜ?」と問いかける人で、まるで問答法の体現者のようです。私は勝手にこれを「コンヨーの問答法」と呼んでいます。(新井先生の名前をもじって。笑)そのおかげで、より「知らない」を自覚できています。
これからも、知らないことを恐れず、学び続ける姿勢を大事にしていきたいと思います。
知らないことを知る大切さ
