「なぜ」、「どうすれば」でヒアルロン酸の合併症を減らす

先日、母が「東京で怪我をして1人で帰れないから迎えに来て」と連絡があり、そんな連絡が来るなんてよっぽどだなと、子供のことなど色々手配をしてから東京まで迎えに行くと、想像以上の怪我で驚きました。階段から落ちたそうです。母いわく、手すりを持っていたとのことでしたが、9cmヒール(母は私と違い、毎日ヒールを履いています)で階段を足早に降りていたところ踏み外し、怪我したそうです。
そこそこの年齢の母。本人はそんな大したことととらえてなさそうで、予定のキャンセルや変更はなかなかしないし、家のことをやろうとすぐ動いているので、大人しくしていてと私は怒っているのですが、娘の言うことは全然聞かないタイプでお手上げですw

ヒールを履いているのに、足早に階段を降りる。これはリスクです。
今後はヒールを低くする、階段はゆっくり降りるなどの意識を持って欲しいなと思います。

問題が起きた時に、それを分析し、なぜそうなったか、どうすれば起こらないようにできるのかを考えることが大事です。
そして問題が起きる前に、予測して事前に行動を変えることも大事です。
特に医療に置いては、これらの行動が大事です。

ヒアルロン酸治療の合併症は実際起こっているところでは起こっています。
増えてきている感覚があります。

幸い、今のところ私は自分の患者さんで重症合併症が起きたことはありません。(ただ、だからといって必ずしも私の医師生活で重症合併症が起きないとは思っていないので、毎度気を引き締めています。)
しかし、当院は注入専門ということもあり、他院からの合併症の相談をしばしば受け合併症の症例をみる機会はあります。

なぜ合併症が起きてしまったのかを
「ドクターの勉強不足」「技術能力不足」「運が悪かった」
などのそんな一言で片付けられていては何も改善しません。
どうすれば合併症は起きなかったのかをもっと考えなければいけません。
勉強不足であれば、何をもっと勉強すればいいのか、技術能力不足であれば、どう改善すればいいのかをしっかり深く考えるべきです。

勉強で言えば、まず解剖のイメージをしっかり持つことが大事と思います。この辺ではどの層にどのように血管が走っているとイメージできれば、できるだけ血管に当たらないようにどうすればいいかを考えることができます。
技術に関しては、雑な操作をしていては繊細な動きが必要な場所への注入はかなりリスクです。丁寧な操作を完璧にできるようになってから、繊細な動きが必要な場所への注入をするなどの対策が必要です。

「なぜ」と「どうすれば」を常に意識しています。

ヒアルロン酸治療はお手軽な治療と思われていますが、本音をいうとかなり神経を使ってやっているのでお手軽と思って欲しくないなと思う反面、美容医療を始める第一歩になることはいいことだとも思います。
勇気を出して美容医療をやったのに合併症になってしまい後悔する患者さんが1人でも少なくなるためには、医師の努力は不可欠です。

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