注入治療の難しさは理論通りにやれば良いというわけではないところです。
医学的に100%正しく客観的に見て良い治療がゴールではなく
患者さん本人が良いと思わなければいけません。
私たちが目指す治療は
医学的な正しさと患者さんの希望のどちらも満たす治療です。
「そんなの当たり前じゃないの?」
と思われるかもしれません。
でも医学的に正しい治療と患者さんが望む治療はしばしば異なります。
医学的に正しい治療とは、老化で萎縮した骨のボリュームを戻す治療です。
頭蓋骨が若返れば、顔は自然に若返ります。
まず骨のボリュームを優先的に戻す、これが医学的セオリーです。
対して多くの患者さんは
ほうれい線、ゴルゴライン、マリオネットラインなどは
溝を埋めるようにヒアルロン酸を注入したら良くなると思っています。
そう思うのも無理はありません。
老化のメカニズムに基づいた注入治療が世に現れたのはほんの10年前で
それ以前は溝を埋める治療しかありませんでした。
患者さんの知識がアップデートされてないのは当然です。
そして患者さんを混乱させるのは、
今も従来の溝を埋める治療もあり、新しい治療と
両方が「ヒアルロン酸注入治療」
と同じ言葉で語られていることです。
医学的に正しい治療は変化が自然です。10歳くらい若返る治療をしても違和感がありません。
従来の溝を埋める治療は少量なら問題ありません。でも深く刻まれた溝を大量のヒアルロン酸で無理やり起こすと、不自然に膨らんだパンパンの顔になってしまいます。
どこに行っても医学的に正しい治療が受けられるようになるのが理想ですが、
今私たちにできることは
患者さんに新しいヒアルロン酸注入治療を知ってもらうことです。
老化は骨が痩せてきたことが大きな原因なんですよ
ほうれい線もゴルゴラインもマリオネットラインも骨の痩せが原因です
最新のヒアルロン酸注入治療は骨を若返らせるように骨にくっつけて注入します
顔の土台である骨が若返ると自然に顔は若い頃に戻ります
というように
老化のメカニズムや注入治療でできることを説明します。
説明するだけでは足りません。
患者さんの悩みを聴きとったり
5歳、10歳若くなりたい、疲れてるような怒ってるような雰囲気を何とかしたい、可愛らしくなりたい、など全体として自分の顔をどう捉えどうなりたいのか知る必要があります。
患者さんのお顔の状態を分析し
患者さんが「なりたい自分」になるための具体的な治療プランを作成し、
さまざまな治療パターン、
段階的に、短期間でしっかり、気になる症状に集中して、全体的にバランス良く
などがあることも伝えなければなりません。
患者さんが治療を理解して初めて治療するかどうかという話になります。
治療するのであれば
ヒアルロン酸の本数を決めてもらい、
今日はどの悩みを優先するのかを確認し、
今日の治療でどの程度お悩みが良くなるのかを伝えます。
治療の前にここまでのことをしないと
医学的な正しさと患者さんの希望のどちらも満たす治療は成り立ちません。
従来の溝を埋める治療ではこれほど繊細に考える必要はなく、
だからこそ新しい治療が広まりにくいとも言えます。
最新の治療をするために必要なのは時間と手間だけではありません。
従来の治療では要らなかった技術が求められます。
注入治療のためのカウンセリング、アセスメント、テクニックです。
この3つのスキルを身につけることは一筋縄ではいきません。
その理由の一つが
注入治療が「顔全体を対象とした個別的治療」であることが挙げられます。
私たちはどんな顔のどんな要望を持つ患者さんにも対応できるような
「普遍的な考え方」を身につけなければいけないのです。
見る目も養わなければいけません。
カウンセリングテクニックも必要です。
新井先生は、自分で見出すことが難しいこうした「注入理論」を指導できる数少ないもしかしたら唯一の医師です。
もちろん指導者が素晴らしくても
一朝一夕で身につくわけではありません。
個人の学びと経験とフィードバックが必要です。