ボトックスのテーマ続きで最も嫌われやすい額のシワへのボトックス治療についてよりわかりやすく。
額のシワは誰しも消したいシワの一つ。シワを消すならボトックス、ということでボトックス治療をすでにされている方は多いですが、逆に絶対にボトックスは嫌だと嫌われやすい場所でもあります。なぜこんなに嫌われてしまうのか。答えは簡単で、額へのボトックスの合併症として眉が下がって目つきが悪くなってしまったり、眉尻が上がってしまうスポックブロウという状態になってしまうことがあり、それによって変な表情となるからです。ボトックスに精通したドクターはもちろんそのような失敗顔にならないための方法を知っており、工夫することでできるだけ合併症の発生を低くすることができますが、誰もがそのような熟練のドクターに施術してもらえるとは限りません。残念ながら不用意なボトックス治療は合併症のリスクを避けて通ることはできません。
額のシワは表情シワの一つであり、表情シワというのは表情を変化させることによって発生するシワです。極端なことを言うと、能面のように全く表情を変えずにいるとシワは発生しません。ちなみにほうれい線はマリとネットラインといったシワは、たるみが原因で発生するシワであり、表情シワとは原因も治療も異なります。額のシワは前頭筋という額の筋肉が収縮することでできるシワであり、前頭筋を使わない状態では発生しません。額のシワが気になる人は一度目を閉じた状態で写真を撮って見てください。シワが消えているか薄くなっているのがわかると思います。目を閉じてもシワがある人は長年かけて真皮に刻まれたシワであり、重症と言えます。治療にはやや時間がかかります。
ということで、「額のシワは自分で作り出している」という事実をまず認識してください。そして額のシワを作っている筋肉は前頭筋で、これは額の上下方向に並んでおり、この筋肉を使うことで眉を上へ持ち上げて驚いた表情をつくります。下の写真に筋肉の位置や流れを書いてみました。
ボトックスはこの前頭筋に注射し、筋肉を緩めることでシワを発生しないようにします。しかし上下方向に動く筋肉を緩めると当然筋肉は伸びて眉を持ち上げられないばかりか眉が下がって目にかぶさり、非常に目つきが悪くなってしまいます。上下に動く筋肉を緩める以上、ボトックスでは避けられない合併症です。そうならないためにボトックスに精通したドクターは、前頭筋の上の方だけに上手に注射したり、マイクロボトックスと呼ばれるテクニックを使って前頭筋のごく表面だけを緩めてシワを伸ばし、筋肉の一部は動くようにすることで眉が下がらず、変な表情とならないようにします。上手に行うとシワを消しつつ表情もナチュラルにつくれ、違和感のない仕上がりとなります。
額のシワをより完璧にナチュラルに消したい場合、額のシワは自分で作り出していること以外にもう一つの事実も知っておく必要があります。それは。「額もたるんでいる」ということ。意外に思われるかもしれませんが、頬やアゴなどと同様に、額もたるんでいきます。額にある脂肪、筋肉は小さくなり、土台となる骨が萎縮していくと余った皮膚は下に下がって目にかぶさってきます。このたるみで目元が重くなるのが嫌で、皆前頭筋を使って目を開けようとする結果、額にシワを自ら作ってしまっているのです。つまり、額のシワの根本的な原因としてたるみがあります。
〈額のシワができるまで〉
①額のたるみによって眉が下がり目が開けにくくなる。
②瞼の筋肉だけでは目が十分に開かず、額の筋肉を使って目を開けようとする。
③額の筋肉(前頭筋)が収縮することで皮膚が引っ張られてシワができる。(さらに眉毛が持ち上げられることで上顔面、中顔面のバランスも崩れる)
シワをつくる直接的な犯人は前頭筋ですが、その前頭筋さんもやりたくてそうしているわけではなく、目を大きく開けたいがため仕方なくやっているのです。目を開けるための眼瞼挙上筋だけで十分に目が開いていれば、前頭筋さんもそんな悪いことに手を染めることはなかったでしょう。本当の黒幕は「たるみ」であり、そいつを治療しないでただボトックスだけをしていてもまた悪さをします(ボトックスの効果持続期間は約半年のため)。
ということで、額のシワをボトックスだけで治療するには不十分であることがわかると思います。もし親切なドクターが額のシワを消すためにボトックスを強めでうってくれたとしてもそれは合併症のリスクを高め、ボトックスがより悪者になってしまうだけで、正しい治療、十分な治療とは言えません。額のたるみをリフトして、前頭筋を使わなくても目が十分に開くようにしてあげる必要があります。リフトアップには糸で引っ張るかフィラー(充填剤)で萎縮した骨の代わりとしてあげるかですが、額のボリュームを出してあげるほうがこの場合はナチュラルな治療となりますし、女性の場合は丸いおでこがかわいらしく見え、憧れですので、フィラー治療が適しているかなと思います。フィラーとしてはヒアルロン酸、自己脂肪があります。それぞれメリットデメリットがありますので、自分に合ったものを選ぶとよいでしょう。私の専門であるヒアルロン酸注入のメリットは注入量と仕上がりに誤差が少ないこと、注入後の修正が容易で、万が一の際には溶かしてなかったことにできること。脂肪の場合にはアレルギーの心配がなくて長く残る反面、注入量に対して残る量が厳密に調整できなかったり左右差などの調整が難しく、大きくなってしまった場合に減らすことが困難です。傷や身体への負担も少なく、承認品を使用することでアレルギーやその他の副作用を減らすことができるヒアルロン酸注入が今の段階では優位かなと考えていますが、日進月歩の医療においてはいつかより良い治療が出てくるかもしれませんね。
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