広告の数字の裏側と、プロフェッショナルとしての「学びの流儀」

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おはようございます。
今日も診療前の短い時間ですが、日々の気づきや医師としての考えをミニライブ形式でお届けします。

今回のテーマは、ふとした日常の疑問から始まる「統計の数字」の話と、私が医師として大切にしている「覚悟」、そして成長するための「質問力」についてです。

「医師の97%が推奨」の正体とは?

先日、テレビCMを見ていた時のことです。ある健康食品かヨーグルトのCMで、一瞬だけ「医師の97%が推奨」という文字が表示されました。

それを見た瞬間、私は思わずこう考えてしまいました。「おや? 私はそのアンケート、聞かれていないぞ」と(笑)。 私の周りのドクター仲間に聞いても、やはり誰一人として聞かれていませんでした。「じゃあ、私たちは推奨していない残りの3%に入るのか?」なんて冗談交じりに考えたりもしましたが、そもそも調査対象の医師はどこにいるのでしょうか。

これが広告や統計の「妙」であり、少し怖いところでもあります。 よく見ると、その数字の下には非常に小さな文字で「○○という条件下で調査した場合」といった注釈が書かれていることが多いのです。

嘘をついているわけではありません。しかし、読み手が「世の中のほとんどの医者が認めているんだ」と錯覚してしまうような見せ方は、広告戦略としてよく使われます。これは美容医療の広告でも同様で、一見良さそうに見えても、専門家から見れば「少し言い過ぎだな」と感じる表現が混ざっていることがあります。

 

論文の数字も「読み解く力」が必要

実はこれ、広告だけの話ではありません。医学論文の世界でも似たようなことが起こり得ます。 ある薬の効果を証明するために、本来の全体データでは差が出なかったけれど、「特定の年齢層に絞ったら効果(有意差)が出た」というような統計的な操作が行われることもゼロではありません。

だからこそ、まともな医師であれば、たった1つの論文の結果だけで「これが絶対に正しい」とは判断しません。 「白」という論文が80個、「黒」という論文が20個あって初めて、「白の可能性が高いな」と傾向を掴んでいくものです。 情報が溢れる現代だからこそ、1つの数字や広告を鵜呑みにせず、一歩引いて本質を見ようとする姿勢が大切だと感じています。

 

美容医療における「救急医療」並みの覚悟

さて、話題は変わりますが、先日当院でドクター向けのセミナーを開催しました。 その際、少し参加された先生方に対して「厳しすぎたかな」と反省していることがあります。

私は元々、救命救急や麻酔科といった、一瞬の判断ミスが患者様の命に関わる厳しい環境で長く医師をしてきました。 美容医療は、直接的に命のやり取りをするわけではありません。ヒアルロン酸を注入する位置が数ミリずれたからといって、死に至ることはまずありません。

しかし、私は「命ギリギリの現場と同じ覚悟」で美容医療にも向き合いたいと考えています。 「ヒアルロン酸をどこに打つか」「どの治療を選択するか」。その一つの決断には、重い責任と結果が伴います。だからこそ、指導する立場になると、つい「風邪薬一つの選択でも、命に関わるのと同じくらいの覚悟を持ってほしい」と厳しく求めてしまうのです。

患者様の立場からすれば、やはり「安全に対するこだわりが強く、厳しく訓練された先生」に施術を任せたいと思っていただけるのではないでしょうか。その期待に応えるためにも、プロフェッショナルとしての厳しさは持ち続けたいと思います。

 

成長する人の「質問力」

セミナーでは、技術だけでなく「学び方」についてもお話ししました。 成長する医師、あるいはビジネスパーソンに共通するのは「質問の質」です。

例えば、ある治療法について先輩に聞くとき、「Bという方法ではやらないんですか?」と単純に聞くだけでは、「やりますよ」の一言で終わってしまいます。 もし自分が本当に知りたいことが、「なぜAではなくBを選ぶのか」「どういう状況で使い分けるのか」という深い部分にあるなら、質問の仕方を変えなければなりません。

おすすめなのは、質問する前に「なぜ自分はそれを疑問に思ったのか」「自分ならどう考えるか」を徹底的に掘り下げることです。

  • なぜその手技を選択するのか?
  • そのメリットとデメリットは何か?
  • しない場合のデメリットは何か?

ここまで自分で仮説を立ててから、「私はこう考えますが、先生はどう考えますか?」と質問をぶつけると、返ってくる答えの深さが劇的に変わります。 指導医が持っている「自分の想像を超えた知識」を引き出すためには、自分自身が思考停止せずに考え抜く準備が必要です。

できないことを知る勇気

最後に、医療において最も重要なのは「自分ができることと、できないこと」を客観的に見極める能力です。

自分の技術で対応できない症例に無理に手を出すことは、患者様の利益にはなりません。 例えば、呼吸器内科医が脳出血の患者様を前にして、無理に自分で手術をしようとはしませんよね。速やかに専門の脳外科医に繋ぐのが正解です。

美容医療でも同じです。自分の手に余ると判断したら、適切な専門家に任せる。 自分自身を客観視し、できないことは「やらない」と判断できることこそが、患者様の安全を守るための重要なスキルだと考えています。

少し堅い話になってしまいましたが、患者様に誠実に向き合うための「医師の裏側の思考」をお伝えしました。 それでは、今日も一日頑張りましょう。

 

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