たれ目院長ブログ 〜紹介忘れてました。新しいタイプのヒアルロン酸製剤が出ました。アラガンのボラックスもう使ってます。〜

ラベールがメインで使うヒアルロン酸製剤はアラガン社の「ジュビダームビスタ」シリーズで、その中でも最も弾力が高い「ボラックス」が発売されました。

弾力が高いということは単純に硬いということで、ボリューマに比べるとより尖った形を長く保てます。その特徴が活かされる部位はアゴ先や下顎のライン、鼻筋、などでしょうか。シャープさを求められる部位の施術に適しています。

今までのボリューマではダメなのかというとそういうわけではありません。患者様の皮膚の薄さや脂肪層の厚み、骨萎縮の状態によって最適な弾力の製剤を使い分けていくので、その選択肢が広がったということです。

ナチュラルで違和感のない仕上がりとはただ単に見た目が自然であるだけでなく、表情の動きや触れた時の感触までもが違和感ないということも大事です。そのためには治療部位、目的、肌の状態に合わせて最適な弾力のフィラー剤を選択することが欠かせません。自己脂肪、コラーゲン、ヒアルロン酸とある中で、唇の柔らかさから顎先や鼻の硬さまで幅広い選択肢があるのは今のところヒアルロン酸しかないと思われます。

そう、ヒアルロン酸は弾力の違いが明確にあるのでそれを使い分ける技術というのが本当に大切なのです。

注入するヒアルロン酸製剤は硬ければ硬いほど良い、とドクターも含めて結構勘違いされやすいことがあります。しかしこれは時に大きく間違うことがあります。綺麗な形だけであればどんな製剤であっても形作ることは可能です。しかし硬すぎる製剤を使うと動きに違和感や障害が出ますし、逆に柔らか過ぎると表情の動きによってヒアルロン酸の形が変形してしまうこともあります。

例えば唇への注入はボルベラが推奨されるのですが、ボリューマでもできるよというドクターはいます。もちろんボリューマでもできます。テクニックは同じですから。ボリューマをリップに注入すると弾力が高いために非常にエッジの効いたラインを作ることができます。しかし唇を寄せる動きが硬いヒアルロン酸でブロックされてしまい、表情に違和感が出ます。簡単に言えばキスする時の形ができず口笛も吹けなくなる恐れがあり、キスした時の硬さも違和感となります。

また、皮膚が薄い方やたるみが強い状態で皮膚のテンションが低い場合に硬いヒアルロン酸を不適切に使用すると、注入された部分だけが盛り上がったり、顔の中で一部分だけシャープさが極端に強調されてしまうこともあります。

ボラックスはアゴのラインや鼻など表情の動きが少なく、直線的でシャープなラインを出す部位への注入に向いてはいますが、顔の治療というのは全体のバランスが非常に大切ですから、そのバランスを乱すようなラインはいくら綺麗な直線であっても違和感となるリスクがあります。

以前にセミナーで、海外の注入治療の権威であるドクターが双子の姉妹に対して全く同じ治療をボリューマを使った場合とボラックスを使った場合で比べていたものがありました。それも2組の一卵性双生児姉妹に。

結果は衝撃的でした。全く同じ治療を全く同じと言って良い顔に行ったところ、ボリューマを使った顔は角にわずかな丸みを帯びていてほんの少し優しいラインになるのに対し、ボラックスを使った顔は角の鋭さが強調されて、シャープな輪郭となったのでした。

話はそれだけで終わりません。ではボリューマを使った顔とボラックスを使った顔ではどちらが良かったかというと、どちらも良かったのです!

ボリューマを使った優しいライン、これはこれで綺麗だし、ボラックスを使ったシャープでキレのある輪郭、これもまた綺麗なのです。ただ、2組の双子ではどちらが元の顔の印象に似合っているかが少し分かれました。

元々やや丸みのある双子姉妹の方は、ボリューマの優しいラインが非常によくマッチしていました。それに対してボラックスの方は、やや丸みのあった顔がシャープなラインとなり、顔の雰囲気が綺麗系、格好良い方向へとなりました。そうすると元の顔で持っていた印象がガラッと変わってしまったのです。

もう一組の双子姉妹は逆にやや面長でシャープな輪郭でした。そうすると、最初の双子とは異なり今度はボラックスを使った顔は元のシャープなラインを崩さず、よりシャープでキレの増した輪郭となって美人度、格好良さがアップしたのに対してボリューマを使った顔はほんのり優しいラインが加わって、顔が優しく、どちらかと言うと可愛い系の方向へと変化したのです。

この結果からわかることはどちらの製剤が正解だったかではなく、どのような印象にするのか、それによって使い分けることが大事であって、目的に合っていればどちらも正解だということです。元の顔の印象を全く変えずに整えることもできるし、可愛い系から美人系へ、美人系から可愛い系へと路線変更することも治療方法によってできるという事実を治療するドクターが認識しておくことが最も大切なことです。

顔の印象というのは本当に少しのライン、面、影の変化で起こります。これは今度書こうと思っているテーマでもありますが、顔の印象を決定するのはそういったもののバランスで、このバランスを崩すことなく治療すると本人の顔の特徴を全く変えずにより若く、綺麗に整えることができるのですが、ひとたびバランスを崩してしまったりオーバーしてしまうと途端に別人のような顔になったり印象がガラリと変わってしまうことがあります。

それを逆手に取って印象変化させるためにあえてバランスを変えるというか、あるラインを強調したり丸みを強調したりすることもあります。しかしこれは本当に印象が変わってしまうので、患者様本人の意思、希望をしっかりと、とことん確認した上で行います。患者様は、こうしたら顔はこうなるのではないか、というイメージを持たれていますが、本当にそうなるかを知っているのは経験豊富なドクターであるはずですから。

一卵性双生児をモデルにしたパターン別の治療は、同じ顔にどういう治療をしたらどういう顔になるのかというシミュレーションであり、実際にはできないことなので非常に多くの情報をもたらし、専門家にとっては大変有益な研究でした。正直、うらやましく思います。なかなかそんなチャンスはありません。しかし将来的には顔を3D撮影し、コンピューター上で治療パターン毎の結果を画像で確認したり、結果も3Dで見られるような時代になるのではないかと思っています。

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