たれ目院長ブログ 〜プロは物事をいろいろな角度から見ることが大事〜

A4のコピー用紙を1枚出され、これは何面あるかという質問に対し、かつて6面あると答えた人がいました。普通は裏表の2面と答えるところですが、紙を薄いけど立体として捉えると線のような縁も面として考えることができます。

なぞなぞのような話ですが、ここから学ぶことは同じ物事であっても見方を変えることで違った考え方を持つことができるということ。物事を一方的、画一的にしか見ないと別の側面を見落としたり新しい発見につながらないこともあります。

歳をとると身体だけでなく頭の柔軟性も失われ、考えが固くなりがち。41歳の私が言うのもちょっと変な話ですが、若い人の柔軟性や、失敗を恐れないチャレンジ精神を見るとちょっと羨ましいなあという感情が出るようになってしまいました。と同時に昔は自分もそんな感じだったなと思い出すことも。

さて、注入治療において必要なのは患者様の顔を文字通りいろいろな角度から観察すること。写真とは違い、人は常に同じ角度だけから見られるわけではありません。正面だけを整えても斜めや横顔、または上からも下からも、いろいろな角度から見られます。どの角度から見ても綺麗に見える立体に整えていかなくてはなりません。

私が患者様の顔を見てアセスメントする時、まるで画家がデッサンをするように細かい部分を見たり、時には離れて眺めたり、そしていろいろな角度から観察していきます。よく患者様に、先生は画家や彫刻家みたいに自分を見てくれる、治療してくれる、と言われますが心境はまさに同じかもしれません。

顔をじっくりと細部まで観察し、細かい起伏や凹凸を見逃さず、影の位置や入り方にまで気を使う。治療になると、最初は一本木から大まかな形を削り出すように土台治療を大胆に進め、後半になると小さいノミで細部を削るように細かい部分を調整し、最終的にはヤスリで表面を仕上げるかの如く面を整えていく、やっていることは違えど芸術家のような気持ちになります。

後半の細かい仕上げの段階になると、ただ綺麗な形にするのみでなく、どのような形にすればより綺麗に見えるのか、しかもそれが正面からだけでなく斜めや別の角度から見てもちゃんと綺麗に見えるように。そのために常に色々な角度から患者様の顔を観察していますし、患者様の横に立って頬のラインを整えている時も正面や反対側から見られた時にどう見えるかをイメージしながら施術しています。イメージするというか、はっきり言えば反対から見てる風景が見えるのです。訓練の結果。

顔の左側を見ながら同時に右側の景色も見える、これは比喩ではなく、物事を俯瞰して見ることで可能になってきます。逆に目の前にある顔の一面しか見ず、俯瞰して見たり顔を立体構造として頭の中でイメージ出来なければ、治療後に別の角度から見た時にあれっ??となってしまうかもしれません。

超能力者でもなければそんな見えないものを見るなんてできないでしょ〜、と普通は思われるかもしれませんが、プロはできます。その道のプロは技術を追求していくとおそらく共通する感覚を感じているのではないでしょうか。これは私の勝手な想像ですが。プロのレースドライバーにしか到達できない景色、プロ棋士にしか見えない読みの世界、職人にしか感じられない感覚、そういった専門家の感じる感覚があると思います。

冒頭の紙の話に戻ると、紙を6面と答えた瞬間を見ていて、私にはそれが自分の考えの枠を広げるきっかけともなりました。いやいやこれを6面と言うのはきついでしょ、謎かけだったらそう言ってよ、と反論したくもなるかもしれませんが、私は素直に受け止め、自分の考えを広げることにつなげました。要は受け止め方です。同じ物事もマイナスとするかプラスとするかはその人次第。「無用の用」とは私の好きな言葉の一つです。

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