美容医療を検討するとき、多くの方がまず思うこと。
それは「上手い先生にお願いしたい」という気持ちではないでしょうか。
良い治療を受けるための下調べはとても大切です。
けれど実際に探してみるとたくさんの先生がいて、たくさんの症例があって
誰を選んだらいいんだろう?と困ることが多いと思います。
それくらい「上手い先生」を見つけるのは難しく私自身、周りから誰が上手?と聞かれることが多いです。
ただ、私は人のことを評価する立場でもないですし、
よく知りもしないのに上手だとか下手だとか絶対言いたくないし
正直普段からそういうことをあまり考えていません。
ただ、いざ真剣に上手い先生について考えていると
患者さんが思う“上手い”と、私の考える“上手い”には、
少しズレがあるのかもしれない、ということがわかってきました。
今日は、私自身の考える“上手い先生”についてお話ししていきます。
技術がある=上手いのか?
「技術がある先生=上手い先生」これは間違っていません。
医学的な解剖知識があり、血管走行や層構造の理解が深い。
リスクに配慮をしながら安全で効果的に注入できる。
これは医師としての重要な技術です。
どういった場面で技術を見ることができるのか。それは実際の注入手技です。
注入している手技の様子を見ると、一見簡単そうにやっているように見えます。
簡単そうにできるのは、理論に裏付けされた熟練の技術、そして豊富な経験があり
動作に迷いがなくなり無駄な動きがなくなっていくからです。
スポーツや音楽と同じで、上手な人ほど軽やかに、洗練された所作で魅せるものです。
いわゆる大御所の先生の注入は本当に美しくて惚れ惚れします。
しかし、注入の手技を見れることは患者さんはもちろん、私にだってそうそうありません。
なのでこれで判断するというのは無理な話です。
技術を判断できる要素としては現実的には症例写真になると思います。
症例写真で見る技術力
症例写真では様々なことが見て取れます。
まず仕上がりですが、ボコついていない、バランスが良いなどBefore/Afterを見ることで、
その先生の「美意識」を見ることができます。
全体のバランスや変化などその症例写真を「いいな」と思っているのであれば
おそらくドクターとご自身の「美意識」が似通っていると思います。
しかし、症例写真で見える技術はあくまでも一部分であるということも事実です。
注入治療は基本的に“量依存”で効果が出ます。たくさん入れれば、それだけ大きく変化します。
けれど、実際には全ての人が劇的な変化を求めているわけではありません。
「少しだけ若く見られたい」「バレずに印象をよくしたい」「予算内で最大限効果を出したい」
そんな繊細な希望を持つ方がとても多いのです。
そのため実際の治療では限られた本数で結果を出すことが求められます。
つまり、私が思う“高い技術力”とは、
限られた量の中で、その人が望む変化を最大限引き出せる力です。
ここで突然ですが昔話をします。
私が注入を初めて半年ほど経ったくらいの時です。
安定して3cc程度の治療ができるようになってきて、できることが増えて楽しくなってくる時期。
新井先生のもとに、初めての治療の患者さんがきました。
30代後半くらいの方で美容医療初めて、初めての治療を新井先生にやってほしいと遠方から来られてたと思います。
カウンセリングをして3cc注入していくことに決まりました。
私もカウンセリングを見学しながら、3ccだったらこんなプランだな、こうなるだろうな、と治療プランを考えていました。
そして実際に治療の場にも同席させていただき、私はとても衝撃でした。
私の3cc のイメージと新井先生の3ccの治療結果は全く別物だったのです。
患者さんは喜びのあまり半泣き。私は衝撃で呆然としていました。
私(しかもはじめて半年)と新井先生の技術に差があることは至極当然なのですが
それをリアルに感じることはその当時少なかったのです。
というのも、新井先生の患者さんは既に治療がされている患者さんだったり、
他院で色々と治療をして新井先生にたどり着いたとか、初めての治療、10ccお願いします!みたいな
いわゆるレベルの高い患者さんが多く
自分の患者さんだったら、というイメージがそもそも難しい人が多かったのです。
その時、初めての美容医療、30代後半、3ccという、
私にも起こりうるシチュエーションで見た3ccの衝撃を、私はいまだに鮮明に覚えています。
その経験から私の持つ3ccと新井先生の持つ3ccが全くの別物だということをありありと感じ、
それこそが技術力だとはっきりと感じました。
(3年ほど経った今の3ccは、新井先生に近づけているはずと思っています)
注入治療の奥深さ
注入治療は一見すると
「針を刺し、ヒアルロン酸を入れて、針を抜く」
たったそれだけの治療なんですが
実際の注入では
「何を、どこに、どれだけ、どの層に、どう入れるか」
これらを常に考えています。
たった1ccでも、打ち方次第で結果はまったく変わる。
その中で「この状態に対してこの打ち方がベスト」と判断し、100%の効果をどんな状況でも安定して引き出すこと。
それが、本当の意味での“技術力”だと思っています。
ただ、ここが落とし穴。
「技術がある=理想の治療結果になる」とは限らないのです。
え?終わらないの?一瞬終わったと思うじゃないですか。
私も終わりたい気持ちなんですけど、まだ足りないんです。
私の思う「上手い人」にはまだ足りない。
でも3分の2くらいはきたので、あと少しお付き合いください。
でもそれだけじゃ足りない、カウンセリングの力
ここまでで「本当の技術力」とは何か感じてもらえたでしょうか。
でも、実はそれだけでは足りないのです。
なぜなら、技術的に完璧でも、“患者さんが求めている結果”を叶えていないと、
結果的に満足にはつながらないからです。
例えば10本以上入れて大きな変化を出した症例写真があったとして
それがとても自然に若返っているとしても
それが全ての人が望んでいるかというとそうとは限りません。
たとえ−10歳の治療ができるとしても
「そこまで若返りたいわけではない」「バレない程度の治療がいい」
そういう治療を望まれている方も多くいます。
つまり医師が「正解はこれだ」と一方的に治療方針を決めてしまえば、
たとえ技術的に美しく仕上がっていても、本人の気持ちはついてこず満足はできない。
裏を返せば、患者さんの中にある本当の希望がわからないと
私たちは治療プランを立てることができないとさえ思います。
だからこそ、技術力だけでなく、
「その人の悩みや希望をどれだけ深く読み取ることができるか」が大切になります。
患者さんの言語化できていない悩みや希望をくみ取り、
「その理想を叶えるためには、どこを、どう治療するのがベストか?」
を一緒に考えて、治療プランに落とし込み、提案する。
本当に満足いく注入には“カウンセリング”は絶対に欠かすことができない要素です。
注入治療が上手い=技術 × カウンセリング
私が考える“本当に上手い先生”とは
• 限られた量の100%の効果を引き出す技術力
• 「その人にとっての理想」を正確に読み取るカウンセリング力
この2つが合わさって、ようやく“上手い”が成立すると思っています。
症例写真を見ていて、「上手な先生」は全国たくさんいらっしゃると思います。
ただ、本当に探したいのは「上手な先生」ではなく「自分の希望を叶えてくれる先生」のはず。
最終的にそれはカウンセリングでしか判断ができないことになります。
そうなると結局、実際に足を運ぶことでしか判断できません。
ネットやSNSでは見つけられない。けどそうあるべきだと思います。
ネットで聞くような評価だけで名医だと盲信して治療を受けるよりも
実際に話を聞いて、心から納得して治療を受けた方が絶対に満足度は高いです。
今回改めて上手い先生について考えていると自分自身が大切にすべきことも見えてきました。
私は、安心・安全な注入を土台に、丁寧な対話を重ねながら、
一人ひとりの“理想”を叶える治療をこれからも目指しています。
3000字にも及ぶブログを見て下さってありがとうございました。
それではまた。
2022年11月、新井先生に突然治療してくれと無茶ぶりされた日。笑