“ヒアルロン酸ってなんか怖い“と向き合う

ヒアルロン酸って、なんか怖い。
患者さんも、注入するドクターも、少なからずそう感じていることがあると思います。

この「なんか怖い」って感覚、美容医療に限らず色々なところであると思います。心霊現象とかお化けとかってなんか怖いですよね。

でも、そうした恐怖の正体って、じつは「よくわからない」つまり「知らない」ことから来ているのでは?と思っています。

恐怖の正体を知ることが第一歩

ヒアルロン酸の何が怖いのか?どうして怖いのか?

それをひとつひとつ明らかにしていくことで、不安は確実に軽くなります。

ドクター目線でいえば、やっぱり「合併症」が怖いです。
そしてその中でも、最も怖いのが血管塞栓です。

血管塞栓とは、ヒアルロン酸が血管内に入ってしまい、詰まってしまうこと。
それによって血流が止まり、皮膚の壊死や失明といった重篤な症状につながることがあります。
(画像は無断転載できないので各自で検索してみてください)

じゃあ、どうすればこの怖さを乗り越えられるのか?

私はこう考えます。

予防策・診断・対処法

この3つの柱をしっかり身につけることが、恐怖を乗り越える鍵です。

起こさないようにするための「予防策」

起こした時にどうするか「対処法」

対処法を実行するために必要な「診断」

 

【予防策】血管塞栓を“起こさない”ために

  • 血管の走行や深さを学ぶ
  • 実際に触れて位置を確かめる
  • 血管のない安全な層に注入する
  • アスピレーションを行う
  • アスピレーションをしながら針を進める、少し浮かせてみる、回転させてみる
  • ゆっくり少量ずつ注入する
  • 過量な注入はしない

これらはすべて、「リスクを限りなくゼロに近づけるための工夫」です。こんなにたくさんあるのはどこまでいっても注入治療はブラインド操作で見えないからです。血管が触れないから、絶対に安全って言えますか?アスピレーションしたから絶対に安全って言えますか?一つの情報だけで安全と決めつけるのは危険です。

【診断】血管塞栓を“すぐに見つける”ために

  • 初期症状を学ぶ
  • 注入前後の写真を撮る
  • 注入中の皮膚変化を観察する
  • プッシュテストで色調の差を確認する
  • 治療後30分ほど経過をみる
  • 帰宅後もすぐに連絡が取れる体制にしておく

血管塞栓はどれだけ早期に治療を開始できるかが重要。だからちゃんと初期症状を知り、その上で拾えるような体制を作ることが超重要です。世の中に出回っている血管塞栓の画像のほとんどが3,4日目の症状が強く出た時のもの。あの始まり、つまり注入直後の状態を知っている先生はどれほどいるでしょうか?塞栓を見抜いて診断することは想像以上に難しいです。そして帰宅した後も患者さんと連絡を取れる体制にしておくことが早期発見、早期介入に繋がります。

【対処法】万が一“起きてしまった”時の備え

  • ヒアルロニダーゼを十分量ストックしておく
  • 投与方法・使用量・プロトコルを学ぶ
  • アナフィラキシー対策としてエピペンを常備
  • 日頃から患者さんと誠実に向き合う

これらすべてが、「起きてしまったとき」に自分を支えてくれます。特に最後の患者さんとの向き合い方はとても重要です。医者にとって一番辛いことは治療をさせてもらえないことです。信頼関係が破綻していると、自分の治療の責任すら取らせてもらえないことが起こります。塞栓の治療はドクターにとっても患者さんにとっても苦しいものです。その苦しさを伴走してもらえるかどうかはドクターと患者さんの関係性に関わってきます。起こってからではなく、起こる前から、日頃から患者さんと真摯に向き合うことが重要です。

それでもやっぱりヒアルロン酸は怖い

改めて羅列すると結構なボリュームでしたね。
でも、この恐怖に向き合い、それに対する対策、理論武装をしているからこそ、ヒアルロン酸の治療ができています。

塞栓はどれだけ治療を重ねても怖いです。どれだけやってもリスクは0にできません。
リスク0にするためには治療をしないという選択をするしかなく、でもそうすると患者さんの悩みは解決してあげられません。

この怖さを乗り越えないと、必要な治療ができない。だから日々学んでいます。

恐怖心を乗り越えるためには

今日はヒアルロン酸の血管塞栓にフォーカスしてお話しをしましたが、どんな分野でも同じだと思います。

恐怖心を乗り越えるには、

まず「何が怖いか」「なぜ怖いか」を認識すること。
そのなぜに対する答えを学び、考えていくことで恐怖心は軽減されていきます。
合併症で言えば、「予防策」「診断」「対処法」の3軸で考えるとスムーズです。

逆に、対策のしようがないものはずっと怖いままです。
お化けとか心霊現状とかよくわからないし、対処法もわからないのでずっと怖いままです。

でもヒアルロン酸の治療は向き合うことができます。そして自分だけではなく向き合っている先生は世界中にたくさんいて、年々進化を遂げているため、一定のプロトコルになりつつあります。

“なんか怖い”と向き合うカウンセリング

今日はヒアルロン酸治療の中でも、一番シビアなリスクである血管塞栓についてお話ししました。

しかし実際には「なんか怖い」の正体は人それぞれです。

患者さんの目線では「変な顔になるんじゃないの?」「ずっと続けなきゃいけないんでしょ?」「しこりになるって聞いたけど…」「顔に針刺すとか怖い」などなどあげればキリがないくらいバリエーションがあります。

カウンセリングでは、そういう一人一人の“なんか怖い”にちゃんと寄り添って、
何が不安なのかを聞き出し、十分な情報提供していきます。
そしてその結果「治療する」「しない」を決めるのも、もちろんご本人です。
あくまでもカウンセリングは、納得して治療を選択することがゴールですから。

少しでも不安がある方は、遠慮なくカウンセリングでお話ししてください。
“なんか怖い”を、“ちゃんと納得して進める”に変えること。
それが私の大切にしているカウンセリングです。

それではまた。

松元

お花見な愛犬たるみ(5歳)

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