昨日の中日新聞に、こんな記事がありました。
かつてコロナ禍に空前のブームとなった「キャンプ」が、
今は中・上級者が自分の価値観に合った道具やスタイルを見極めて選ぶ時代になっている──
という内容です。
ちょっと行ってみようよとトライした人たちの中から愛好者が生まれ
彼らが道具の機能性や価格だけでなく、
「自分にとって心地よい」「長く使いたい」と思えるギアを選ぶ。
アウトドアの世界にそんな“成熟”が訪れているということでした。
そして、週末に参加した美容皮膚科学会でも同じような空気を感じました。
美容医療もブームから成熟へ
美容医療がここまで盛り上がってきたのはこの10年以内のことです。
もちろん今も新しいデバイスや材料は日々開発され、SNSには様々な情報が飛び交っていますが、
徐々に、患者さんの価値観に合わせて治療を選ぶ時代に変わってきている、と感じます。
どの治療を選ぶかは、
「どれが効果的か」というだけではなく、
「自分がどうなりたいか」
「何が嫌で何が許容できるか』
によって違う。
同じ「ほうれい線が気になる」でも、
しっかり変化を出したいのか
ナチュラルに見えることが一番なのか
吸収されることを良しとするのか
ダウンタイムが重要なのか
など、ゴール設定や条件によって治療は変わる。
そういう考え方が以前に比べて一般的になってきたように感じるのは私だけでしょうか。
「我こそは一番の治療だ」と争うのではなく、
それぞれの治療のメリットを認め合うのは患者さんにとっても良いことだと思います。
正しい情報+カウンセリング=納得の医療
患者さんの価値観に合わせて治療を選ぶためには、正しい知識としっかりとしたカウンセリングが必要です。
“何をするか”を決める前に、“どうなりたいか”を一緒に考えること。
そして患者さん自身が「自分にとって何が心地よいか」を見極めるためのコンサルティング的視点が、
これからはますます重要になると感じています。
良き“相談相手”でありたい
私はヒアルロン酸注入を専門にしていますが、
患者さんが本当に必要としているのが他の治療であると感じたら、
他の選択肢をご紹介することもあります。
そのためには、注入以外の美容医療にも広くアンテナを張っておくことが欠かせません。
「何がその方にとってベストかを一緒に考える」——
そんな**美容医療の“相談役”**でありたいと、改めて感じた学会でした。
最後に
キャンプも、美容医療も
ブームを越えた先にあるのは、自分の価値観で選択する時代です。
その時代にふさわしい医療とは、
「これが正解」という押し付けではなく、
その方の価値観に合った選択肢を一緒に考えること。
そのためには、私たち医療者自身も、
専門領域にとどまらず、幅広く知識をアップデートし、
患者さんに公平で誠実なアドバイスができる存在でありたいと思っています。
私は産婦人科医として女性の心と身体に向き合ってきました。
だからこそ、美容医療においても「見た目」だけではなく、
全人的な視点を忘れず患者さんを診ていきたいと考えています。
最近はAIによる医療情報の提供も進んでいますが、
本当に大事なことを決めるとき、背中を押してくれるのは
“この人が言うなら”と思える誰かの存在ではないでしょうか。
そのために、私たち医師は“知識を持った相談相手”であると同時に、
信頼できる人間であることが求められているのだと思います。
これからも、
いくつになっても自分らしく生きる女性たちを医療の力で応援していきます。