たるみ治療の歴史は手術から糸のリフティング、フィラーによるボリュームロス治療へと変遷してきました。体内に充填物(フィラー)を入れてボリュームを出す治療の歴史は意外と長く、半世紀以上前からシリコンが使用され始めました。ところが質の悪いシリコンはその後炎症や発ガン性の問題があり、後に除去する手術がよく行われていました。
(画像はアラガン社のゲル充填人口乳房ナトレルシリーズ)
シリコンは有用な素材であり、医療、工業製品で広く使用されています。シリコン自体は悪いわけではなく、ヒアルロン酸と同じく質の悪いシリコンに問題があるようで、例えば医療用のシリコンを使用したアラガン社の乳房形成用のシリコンゲル充填バッグはFDAに認可され、安全性が確保されています。長期間の使用結果をみる条件付きですが。2006年に発覚したフランスのPIP社は、工業用の安いシリコンを使用したバッグを販売していて大問題となりました。バッグの素材も破れやすく、破裂したバッグからシリコンが漏れ出して炎症を起こすトラブルが続発し、政府が摘出手術をするように呼びかけました。
シリコンの話をすると、舞の海さんが新弟子検査をクリアするために頭頂部にシリコンを埋め込んだことを思い出してしまいます。かなり話題になったので私と同じ年代の方は覚えていると思います。その後どうなったのか気になって調べてみたら、頭痛などの症状があり2009年に除去する手術を受けたようです。相撲の新弟子検査はその後同じ方法をとる人が増えたため、健康上のトラブルを回避するためにシリコンを充填するのは禁止され、代わりに?背伸びして検査を受けても167cmに届けば合格となるようになったとのこと。背伸びして検査を受ける姿は何となく微笑ましい感じがします。何より伝統は厳しく守るけど拡大解釈してパスさせる考え方はちょっと柔軟でいいなと思います。
注入治療はその後、安全性を重視する時代へと移り変わり、弾力や持続期間などの性能を向上させたヒアルロン酸が開発され、重要なフィラー素材となりました。フィラーとしては他にもプロテアーゼや自分の脂肪、軟骨、コラーゲン、ポリマー系素材など様々な種類があり、それぞれにメリット・デメリットがあるので、それを理解して症状に合わせてちゃんと考えた上で使用するととても良い結果が得られます。私はヒアルロン酸を主に使用していますが、ヒアルロン酸があれば他には何もいらない、というような考えは持っておらず、適材適所が大事と考えています。ヒアルロン酸は以前からは思いもよらない使われ方や効果が開発され、幅広い治療に適していると思いますがもちろん限界もあります。例えばヒアルロン酸による隆鼻術は鼻を高くする治療ですが、ナチュラルな範囲以上に高さを出したい場合はプロテアーゼなどの素材が必要となってきます。
他にもたるみを引き上げるには糸が有効で、最近のコグと呼ばれるトゲが付いた糸は皮膚をしっかりと引っ掛けてリフトアップさせるので、上手に使うと強く、ナチュラルにリフトアップさせます。実は私も糸の施術を採用しようとして色々見ていました。その中でシルエットリフトというバイオコーンの付いた糸に目を付け、実際に採用する直前までいっていました。シルエットリフトのコーンはトゲよりもしっかりと皮下組織を引っ掛け、強いリフトを持つだけでなく、コーンが徐々に分解吸収されるときに皮膚のコラーゲン産生を刺激する成分を放出し、肌のハリを出す効果もあります。糸1本あたりの費用は高くなりますがリフト力が強くて皮膚もふっくらとするので、これはいいと思いました。
糸は引っ張る強さのバランスが大事で、リフトアップしたいばかりに少ない糸で強く引っ張ると筋ができたりしますし、緩めるとリフトアップの意味が薄れてしまいます。患者様の予算に余裕があり多くの糸が使えるのであれば、面を作るように糸を配置するとよいでしょうが。ヒアルロン酸のメリットは、あくまでボリュームロスを補い、リフトさせるのは自分の皮膚や靭帯を使うため少量でも違和感なくバランスよく仕上げられることにもあります。例えば診察で、ヒアルロン酸が7㏄必要だと診断した方が予算の関係で3ccでまず治療したいとなった時に、治療ポイントを最適に選べば3㏄でも効果があり、それでいて自然な若返りになるように治療できます。
顔の治療はトータルバランスが非常に重要で、患者様の訴え通りに部分だけの治療をしても思ったより変化ないことがよくあります。ヒアルロン酸2㏄をほうれい線だけに注入するよりも、リフトアップのポイントに分けて注入する方が同じ量でも若返り効果は大きく、ほうれい線も実際に薄くなります。そのことを患者様に理解してもらうことが大事で、医療提供者としてプロの仕事だと考えます。丁寧に説明すると時間も手間もかかりますが…。
そうしてヒアルロン酸治療を追求していくうちに、従来のヒアルロン酸治療の幅を大きく超えて、かなり強いたるみの改善や輪郭治療などの広範囲をカバーできることがわかってきました。これは従来の治療をしていた頃の私からすると信じられない進歩で、効果の高さだけでなく興味も手伝って、ヒアルロン酸による若返り治療をとことん追求したくなり、そうこうしていると糸の治療範囲までヒアルロン酸で可能なこともわかってきて、いまのところ糸を採用していない状況です。
今のところ、ヒアルロン酸の治療範囲の広さと効果の高さに治療しながらも驚きつつ、新しく開発されているヒアルロン酸の進歩の早さに期待しています。新しい性質を持ったヒアルロン酸があれば、今でも治療が難しい部分も治療可能となってきます。その進化がある程度止まるまではヒアルロン酸治療が若返り、ボリュームロス治療の主役となる気がしています。当院ではヒアルロン酸注射とHIFUのダブロを組み合わせて治療しており、今後はよりナチュラルに若返りが可能であればそこに脂肪溶解注射、リフティングの糸を組み合わせていきたいと考えています。
今日は長文になってしまいました(^_^;)。読み返すと長いので二つにわけようと思いましたがそれもまた面倒なのでこのままで…。最近、患者様や他のドクターからブログ見てますって言われることが多くなり、テーマ別に分類したり写真使ったりともっと見やすくしなきゃなと思いつつ新ホームページが遅れていて改善できないでいます。すみません…
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ラベールミラクリニック
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