ヒアルロン酸合併症:発症のタイミングの視点から

こんにちは、松元です。

前回は痛みという視点から合併症を考えました。

以前患者さんから「注入後、血管塞栓のリスクはいつまで血管塞栓を心配すればいいですか?」と聞かれました。

しっかり学んでいる患者さんほど、リスクも知っている分、注入後は心配になりますよね。

今日は発症のタイミングから合併症についてお話ししていきます。

血管塞栓

血管塞栓は、注入直後に発生します。注入した瞬間です。家に帰ってから自然とヒアルロン酸が血管の中に入ることはあり得ません。
そのため発症のタイミングは直後です。
血管塞栓が起こったその瞬間から皮膚は虚血状態になり、時間経過とともに症状が悪化します。

万が一、直後の虚血症状が不明瞭で見逃されてしまった場合にも、
血管塞栓は時間と共に症状が悪化し、2,3日以内には、痛みや皮膚の変色が明らかになります。
2,3日経って何もなければ、血管塞栓のリスクはかなり低いと考えて良いと思います。

感染

次に起こりうるのが感染です。
前回もお話ししましたが、感染成立には注入してからしばらく時間がかかります。
そのため発症のタイミングはおよそ1週間以内です。

8日目にはならないの?と言われたら、8日目にもなる可能性はあるので、1週間前後とさせてください。
ただ、8日目にドカンと発症するというよりも数日かけて赤み、痛み、腫れが出てきます。
そのため、およそ1週間でそのような兆候がなければ、
そこから急激に感染が広がる可能性は低い、と考えて良いと思います。

遅発性有害事象

最後に遅発性有害事象です。
先月まなか先生がとてもわかりやすい記事を書かれていました。

「ヒアルロン酸治療の合併症〜遅発性有害事象〜」

遅発性有害事象はまだまだ未解明な部分が多い合併症です。
程度も勝手に良くなる軽症のものから、外出が難しい重症のものまで様々。
発症の時期は、実はこれまで1ヶ月以降〜1年以内に起こることが多い、とお話ししていたのですが
10年以上前にいれたヒアルロン酸が腫れたという症例報告があることから
これはかなり長期間に渡って起こると考えた方が良いでしょう。
つまり注入後1ヶ月以降、いつでも発症する可能性があります。

 

これらをまとめた表がこちらです。

 

ヒアルロン酸は注射一本で終わるのでお手軽な印象をもたれますが、合併症にはシビアなものがあります。
合併症の話ばかりしていると不安ばかり煽ってしまいますが、
今回の発症のタイミングを一つ目安にして考えてください。

わかりやすく言います。

最も怖い塞栓は、2-3日経過して何もなければ大丈夫。

感染は1週間以内に赤く腫れるなどなければよほど大丈夫。

遅発性有害事象はいつでも起こるので頭の片隅にいれて、もし起こったら主治医にご連絡ください。

ただ、イレギュラーのさらにイレギュラー、
つまり合併症の中でも典型的でないことが起こる可能性はゼロではありません。
これはあくまでも目安として考えて、
ご自身の治療後に不安なことがあった時には、いつでもご相談くださいね。

それではまた。

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